掃除機で「早く」「きれい」の両立探る

2015/5/8

暮らしの知恵

毎日仕事で外出していると、部屋をじっくり掃除できない。「掃除機のヘッドはゆっくり動かした方がいい」といわれても、短時間できれいにと思うと、「せかせか」「ゴシゴシ」になりがち。急ぐのとゆっくりとで、そんなに掃除機の効果は違うのか。「きれい」と「早い」の両立を探るべく実験してみた。

掃除機がけはフローリングよりカーペット敷きの方がおっくうだ。せかせかゴシゴシ状態になるのは圧倒的にカーペットのとき。そこで、2畳強のサイズのアクリルカーペットにゴミをまき、掃除機のヘッドを動かす速さを変えて、掃除時間を比べてみた。

■「せかせか」だとゴミが飛び散る

用意したゴミはOA用紙をシュレッダーにかけた紙ゴミ7グラム。70~80センチ幅の1往復を1秒で済ます「せかせか」から、4秒かける「とてもゆっくり」まで、4段階の動かし方を各3~4回繰り返し、紙ゴミを取り終える時間の平均値を割り出した(下表)。

「せかせか」だとヘッドの動きでゴミは飛び散るし腕も疲れる。かえって「少しゆっくり」の方が早く取り終えた。とはいえ、その差わずか3秒だ。60平方メートルを掃除したとしても52秒差と、1分にも満たない差でしかない。ただし、使用した自宅のサイクロン式掃除機は9年も前の使い古しで、ゴミを取り終えたかどうかは目視に頼るだけ。断裁された紙粉まで取り切れているのか定かではない。

そこで自宅と同じ東芝の最新サイクロン機種をメーカーから借り、同様に実験することにした。計測したのは「ごみ残しまセンサー」が点灯しなくなるまでの時間だ。視認できない微細なゴミの有無まで判断するので当然掃除時間は長くなるが、最新機種でも「せかせか」より「少しゆっくり」の方が早く終わるのだろうか。カーペットとフローリングの床で試したところ、ヘッドをゆっくり動かすほど時間がかかるという意外性のない結果になってしまった。

時間はよけいにかかっても、もしかしたら取れているゴミの量が違うのかもしれない。そう思い立ち、「せかせか」と「とてもゆっくり」で時間と集じん量を比べることにした。紙ゴミに加え、髪の毛や猫の毛、シュレッダーにかけたティッシュペーパーなど、微細なゴミも混ぜ込んだ7グラムをカーペットにばらまく。すると「とてもゆっくり」の集じん量は8グラムと、まいた量より増えていた。

東芝ライフスタイルのクリーナー国内商品企画担当グループ長、大津育弘さんに聞いてみると「ヘッドをゆっくり動かすほど、カーペットの奥まで風を入れることができるので、ブラシがかき上げる集じん量は増える」とのこと。

なるほど、増えたゴミの正体は奥底に潜んでいたチリやホコリだったのか。「カーペットを徹底的にきれいにしたいなら、ゆっくりかけるに越したことはない」そうだ。

やはり「きれい」と「早い」の両立は無理なのか。そのあたり、オフィスビルや家庭の清掃を職業とするプロの人たちはどうしているのだろう。NPO法人日本ハウスクリーニング協会(東京都北区)を訪ねてみた。指導員の佐藤嘉浩さんに掃除機をかけるときのフォームを見てもらったところ、最初のノズルの長さからしてNG。「ノズルが短いから前かがみになって力が入ってしまう。そうすると、せかせかになりやすい」。そうだったのか。

■ハンドルの握りは軽くするのがコツ

「力を使わないようにするには、ハンドルの握りを軽くする。そしてヘッドを引くときは握らずに手を引っかける程度に」。そして目からうろこだったのが「掃除機は押すときより引いたときの方が吸引力が増す」という話だ。「だからヘッドは引くときにゆっくり動かして」。ほほう! ちなみに佐藤さんのスピードは100センチ弱の幅を1往復するのに3秒ほどかける。「普通の人なら70~80センチぐらいの幅でいい」という。

ヘッドは逆Nの字型に動かしていく。斜めに押し出すときに、ノズルに対してヘッドを少し斜めに振ると力を入れずに押せる。ヘッドの位置が3分の1ほど重なるように押し出せば、効率的に隙間なくかけられるという。カーペットは縦にかけたら次は横にと十字がけ……。教えを頭にたたき込み、自宅で早速試してみた。

姿勢を正して押すとき1秒、引くとき3秒。ハンドルを手に軽く引っかけて引いてみると、カーペットが勝手に吸い付いてくるような感じがする。ガリガリとかき上げている様が実感できて、なんだか快感だ。練習して慣れたところで、微細なゴミも含む7グラムをカーペットにまき、掃除時間を計測すると3分50秒。自己流で「とてもゆっくり」のときより、52秒も時間短縮になった。動きにぎこちなさがなくなれば、もっと短縮できそうな気がする。

「きれい」と「早さ」の価値は人それぞれ。忙しい平日か時間の取れる休日かでも違ってくる。「力を入れずに引くときゆっくり」の基本原則を守りつつ、あれこれ試して自分なりのピッチをつかんでいくのが正解のようだ。

実験のため紙ゴミ7グラム分をカーペットに振りまいた
カーペットの奥からかき出した細かな紙ゴミや猫の毛など

記者のつぶやき
■縦横の十字がけ、効率的
 力を入れずにゆっくり動かす。簡単なようで、実は結構練習が必要だ。佐藤嘉浩さんの教えを受けて、最初に2畳強のカーペットを掃除したときは7分近くかかってしまった。
 動かす速さに気を取られて気づけばハンドルをしっかり握っていたり、取り残しが気になって逆Nの字の動きが崩れたり。「カーペットは縦方向が終わったら横方向にもかける十字がけを」と言われてげんなりもしたが、実際に十字がけをしてみると、「ごみ残しまセンサー」がほとんど反応しない。センサーの点滅を気にしながら闇雲にかけるより効率的なことがわかった。う~ん、掃除機がけ一つにも作法がある。
(福沢淳子)

[日経プラスワン2015年5月2日付]

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