キックボクササイズでシェイプアップ
有酸素運動・筋トレ同時に
「まずはゆっくり、爆発力のあるパンチを打ってください。1、2、3、そう、いいね!」。
コーチが構えるミットに向けて、グローブをはめた10人ほどの女性が順々にパンチを放つ。軽快な音楽が流れるジムに「ビシ!」「バシ!」という力強い打撃音が響く。表情は皆、真剣だ。
ヨハンボス・スポーツスクール(東京・港)が開く女性限定クラス「ガールズキック」。代表の田島剛さんは元K-1選手で、海外のジムで長年修業した経験を持つ。格闘技になじみがない女性も気軽に始められるよう、キックボクシングの基本動作を取り込みつつ、エクササイズとして楽しめるようにしている。
クラスは軽いスキップなど簡単なウオーミングアップから始める。グローブと足を保護するための道具をはめて、構えやパンチ、キックを休みを挟みつつ練習する。途中、2人で組になってフォームを練習するが、選手のように激しく蹴り合うような試合は一切なく、初心者でも楽しめる。
同ジムの登録者の約4割が女性で、中でも20代後半~40代の会社員が目立つという。「仕事を忘れて集中すると気分転換にもなって楽しい」と話すのは半年前からクラスに通う吉田静花さん。週に1回休まず通っている。以前はヨガを習っていたが「意外な趣味を始めたい」と格闘技系の運動に転向。「全身の筋肉が引き締まった」(吉田さん)と実感している。
田島さんによれば「個人差はあるものの、週に1~3回程度、半年間通えば、女性なら5キログラム前後は減量効果が期待できる」という。ダイエットやストレス解消などを目的にしている人が多いが、「ストーカー被害に遭った受講者が、護身術として実際に役立てた例もある」という。
キックボクササイズのブームの火付け役は米ハリウッドの女優やモデルたち。「全身をねじる運動なので、腕立てや腹筋運動、スクワットを一度にやるのと同じ効果が期待できる。手っ取り早く体を絞れると注目された」と田島さん。脂肪を燃やす有酸素運動に加え、瞬発的な負荷が筋肉にかかることで筋トレ効果も見込める。
ムキムキの筋肉がついてしまうのではないか、と心配する人もいるが、「バーベルを徐々に重くするなどで負荷を高める運動とは違い、基本的に自分の力が負荷になるだけなので大丈夫」(田島さん)。ミットを打てない自宅ではペットボトルなどを持って、シャドーボクシングをするとよいという。
激しくないクラスも
本格派ジムに行くには体力に自信がないという人向けのクラスも増えている。「スタイルを美しくするのに役立ちそうな動きを重視して教えている」と話すのは、ブリザードジム(東京・豊島)女性専用キックボクササイズのインストラクター、宮代三恵子さん。
体の中の老廃物などを回収する、リンパ液の流れを良くする動きを加えたボクササイズをする。トレーナーが持つミットにキックを連打した後に、片足を一歩前に出して足先に力を入れながら足首、ひざ、足のつけ根までをゆらゆら揺らしストレッチする。
激しいキックと筋肉を緩める動きを組み合わせることで「女性らしく、しなやかで弾力のある筋肉になりやすい」と宮代さん。オフィスワークなどで凝った筋肉をまずほぐすことで、疲れにくい体作りに取り組んでいるという。
ボクササイズ継続のコツは「心拍数を上げすぎず、適度な運動量で楽しむこと」と宮代さん。フィットネスクラブなどでも音楽に合わせてキックを楽しめる教室もある。まずはこういった所から始めるのもいいだろう。
(柳下朋子)
[日経プラスワン2015年5月2日付]
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