新生活、緊張でタラッ 春の汗 においを撃退

春本番。暖かくなると気になってくるのが、体から発する汗臭さなどの「におい」だ。満員電車や会社のエレベーターの中など密閉した空間では、なおのこと不快に感じる人が多いだろう。汗のにおいは周囲に悪い影響を与え、仕事にも支障が出かねない。どうすればいいのか。対応策をまとめた。
制汗剤を使うのも対処法のひとつ

「体臭がきつくなるピークは、汗をかく機会が多い真夏ではなく、実は今の時期なんです」。体臭・多汗研究所所長で五味クリニック(東京・新宿)の五味常明院長は話す。

汗は体の表面にある「エクリン腺」という汗腺から分泌される。汗腺は肉眼では見えないほど小さく、全身に無数に存在する。「春の汗」がにおう原因は、この汗腺の働きが弱まっているからだ。

人間の体は汗をかくことにより、栄養素を取り込むときに発生する熱で体温が上昇するのを防いでいる。汗が蒸散するときの気化熱で熱を外に逃がし、体温を調節している。汗腺は使えば使うほど機能が高まり、においの元であるアンモニアやミネラル成分の少ない「さらさら汗」を放出するようになる。

さらさら汗は小粒で水に近いため、蒸発しやすいという特徴がある。「冬の期間にあまり汗をかかないで来たため、今の季節はさらさら汗になりにくい」(五味院長)という。「春の汗」はにおいのきつい、べたべたとした質の悪い汗になりがちなのだ。

■機会喪失のおそれ

春は人事異動などで職場の人間関係に変化があったり、取引先との新しい付き合いが始まったりする。緊張を強いられる場面が多く、汗が一気に吹き出た経験がある人もいるのではないだろうか。こうした汗は「精神性発汗」といい、においがきつい。夏ほど薄着ではないうえ、汗が蒸発しにくいことも影響して、汗臭さが増してしまうという。

汗のにおいは仕事にも影響を及ぼす。出版社に勤務する野田歩さん(仮名、30歳)は「においのきつい人が近くにいると、仕事に集中することができない」と話す。

マンダムが昨年、実施した職場でのにおいに関する意識調査によると、他人のにおいが気になって仕事に集中できなかった経験のある人は3割強に達する。自分のにおいも含めると約6割が、においが原因で仕事に支障を来した経験があると答えている。

悪影響は仕事の効率面だけではない。ヒューマネックス(東京・港)のビジネスマナー講師、美月あきこさんは、においの最大のデメリットは「相手が、用件が済めばその場から早く立ち去りたいと思ってしまうこと」と指摘する。

取引先など社外だけでなく、社内にも影響を及ぼす。部下や同僚などが近づかない状況になれば情報が遠のく。よりよい人間関係が築けたり、仕事の新しいアイデアが生まれたりといった機会の喪失にもつながりかねない。

■脇・足裏にスプレー

汗臭さを防ぐにはどうしたらいいのか。さらさら汗をかくためには「今の時期の過ごし方に注意を払う必要がある」と五味院長は言う。汗ばむくらい暑い日でも、エアコンの使用は控えること。汗をかいて汗腺の機能を高めることが重要だ。

有酸素運動でゆっくりと汗をかくのもよい。ウオーキングやジョギングなど手軽な運動で汗腺が鍛えられる。運動する時間がない場合は入浴を利用するのも手だ。「高温の手足浴」「微温の半身浴」を組み合わせた「汗腺トレーニング」を五味院長は薦める。

質の悪い汗をかいてしまったときの一番の対策は、なるべく早く、におう前にふきとること。乾いたハンカチより、「固く絞ったぬれタオルが効果的」(五味院長)という。汗臭さの原因は皮膚に残った雑菌。汗の水分をぬぐうだけでなく、皮脂の汚れも取り除くことができる。ぬれタオルの代わりに市販のボディー用ふきとりシートを使うのもいいだろう。

出勤前にできることもある。脇と足の裏を制汗スプレーをひと吹きするのがお薦めだ。この2カ所は、においがこもりやすい体の部位。におい防止効果が大きい。

(ライター 小御門 綾)

[日本経済新聞夕刊2015年4月20日付]

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