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暮らしの知恵

食洗機の使い方、究めてみた

2015/4/24

暮らしの知恵

3年間の単身赴任を終えて半年前に我が家に戻った。それに伴い、1回の食事で出る汚れものがぐっと増えた。「食器洗い乾燥機(食洗機)の使い方を究めてよ」と家族の声。忘れていたが、我が家には2006年製、9年間ほぼ使われていないビルトイン(組み込み)式の食洗機がある。使いこなせば家事も効率化できるかもしれない。

そもそも我が家が食洗機を使わないのは、予備洗いが面倒そうだから。食洗機に入れる前にざっと洗うくらいなら、そのまま洗い切ってしまった方がいい。かくしてシンクの下、食洗機は長い眠りに就くことになったのだ。

まずは、と取扱説明書を探したが見当たらない。仕方がないので汚れた食器や調理器具を適当に収め、スイッチを入れてみた。洗浄、乾燥を終えたところで見ると、食材の切れ端が食器にこびりつき、味噌汁の鍋の内側にはダシの成分とみられる“汚れの首輪”。いいかげんに使えば、汚れ落ちもいまひとつ。

メーカーのサイトをのぞくと、食洗機が苦手とする料理があるという。一例が焦げ付きやすいグラタン、鍋底にルーがこびりつくカレー。これら難敵を打倒できれば「食洗機マスター」に近づけるのではないか。家族がそろう週末のメニューが決まった。

■食器の並べ方や専用洗剤が重要

グラタンは1人分ずつの耐熱皿で焼き、食後は1日放置した。実験で気を配ったのは食洗機内での皿の並べ方だ。食洗機は機内底部のプロペラ状のノズルが吹き出す水で食器を洗う。ノズルを観察し、溶けたチーズやホワイトソースの焦げがこびりつく皿の内側に水が直接当たるよう、入念に位置を決める。

洗剤はとりあえず多めに入れた。洗剤の表示に「予洗いなしでも油汚れをしっかり落とす」とあるので従ったが、汚れは爪を立ててもなかなか取れず、脂も強く感じる。大丈夫か? モーターのうなりが止まって開けてみると、皿は磨いたようにピカピカ。比較のため手洗いした皿で苦労した焦げ付きは跡形もない。

手応えを感じつつパナソニックを訪ねた。流し台に組み込まれた食洗機は我が家と同じく使わない家庭が意外に多いそうだ。だが「1週間で手放せなくなりますよ」と食洗機商品企画チームの橋本茂幸リーダー。ポイントはやはり食器の並べ方と洗剤らしい。

気づかなかったが、食洗機用洗剤は普通の台所用洗剤と成分が違う。人の手に触れないため、酵素や漂白剤、アルカリ剤などの強い洗浄成分を配合できるのだ。グラスを洗うのに向く商品や、ご飯粒などでんぷんに効く成分が強い洗剤など特徴があるという。

同じ理由から、高温の湯を使えるのも利点だ。洗いの時は酵素が働きやすい60度台後半、すすぎは最新機種で80度まで水温を上げられる。これらを生かし、手洗いでは落ちにくい汚れをキレイにする。

これまで使わなかったわけを橋本さんに話すと「予備洗いは基本的に不要です」。勧められたのは「調理器具コース」。フライパンなどのしつこい汚れに向く設定だ。汚れがひどければ洗剤を増やす。

次の週末、満を持してカレーを仕込んだ。同じ鍋を2つ用意し、具材を等分して1つずつ、同じ時間煮込んで完成させた。1つを食洗機に投入し、調理器具コースを選ぶ。洗い上がりはまたもピカピカだ。比較用のもう1つはいつものカレーの後始末と同様、脂との格闘だったのに――。

■高温のお湯で殺菌 手洗いより効果大

高温のお湯を使えるもう一つの強みは殺菌だ。細菌の繁殖をどれだけ抑えられるか試した。新品のまな板3枚でそれぞれタマネギを刻み、ひき肉とこねてハンバーグをつくる。まな板はそのまま1日放置してから手洗い、自宅の食洗機、さらにはパナソニックから借りた最新の卓上機の3通りで洗い、食品微生物センター(神奈川県小田原市)にふき取り検査を依頼した。

結果は表の通り。手洗いでは病気の原因になることもある大腸菌群が見つかったのに対し、食洗機は2台とも不検出。まな板の切り傷に入り込んだと思われる一般生菌の数は、新しい卓上機が自宅機種の3分の1という成績だった。手洗いに使った自宅のスポンジの大腸菌群は「∞」、つまり計測限界を超えた。

2週間ほど使い込んで食洗機の便利さを実感したが、9年前の機種を買い替えた方がいいのかは迷う。違いは洗浄に使う水の量と、それに伴う消費電力。パナソニックによると標準コースの水量はおよそ10年前が約16.5リットルに対し、現在は約8リットル。湯を沸かす電気代も半分という。

今回は口紅の頑固な汚れがキレイになるかも試した。標準コースで比べると最新機種の方がよく落ちたが、調理器具コースなら旧機種でも完全に落ちた。汚れ落ちだけなら不便はなさそうだが……。買い替えの検討はしばらく使い込んで光熱費を確かめてからでも良いだろう。エアコンなどほかの家電と同じ感覚だ。

パナソニックが広報用に自作したポンプを使い、卓上型食洗機の最新型を自宅で試用
食洗機で洗い込んだグラスはビールの泡のもちが手洗いより良かった

記者のつぶやき
■普及に向け 執念感じる
 皿洗いは苦にならない性分。むしろ好きといってもいい。その楽しみを食洗機に奪われるような気もするが、普及に向けたメーカーの執念も感じた。試用のため最新機種を借りたが、本来は据え付けに分水栓の工事が必要。大がかりになる、と思案していると「広報用のポンプがあります」。取材や試用のために開発部署手ずからつくった“水がめキット”だ。バケツにためた水を給水するこの仕組みが今回はとても役に立ったのだ。
 食洗機はグラスがきれいになるとも聞いた。ビールの泡立ちが違うというので試した。結果は、断然うまくなるとまではいえなかったが、確かに泡もちは良くなったように思う。
(天野賢一)

[日経プラスワン2015年4月18日付]

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