アメリカと中国 もたれ合う大国 スティーブン・ローチ著持続困難な繁栄 調整に必要な戦略

2015/4/13

グローバル化が進展する中、世界経済の勢力図が大きく変化している。とりわけ中国の台頭と米国の相対的な地位の低下によって、相互依存関係はこれまで以上に複雑なものとなっている。本書は、このような世界経済の現状を、米国と中国の「アンバランスなもたれ合い」という視点から論じた興味深い本である。本書が特に掘り下げて論じているのは、米国の過剰消費と中国の過剰生産、そのもたれ合いを生み出してきた両国の経済政策の功罪である。

(田村勝省訳、日本経済新聞出版社・2800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

 自由な市場を理想とする米国経済と、政府が大きな役割を果たし続ける中国型市場経済では、経済の仕組みは根本的に異なる。しかし、2つの大国の関係は、いまや経済的には切っても切れない。中国は、世界最大の消費者・米国を最大の輸出先として、短期間のうちに輸出主導型の高度経済成長を実現し、途上国としてみぞうの繁栄を謳歌しつつある。その一方、米国は、中国の余剰貯蓄を使って財政赤字を賄い、中国から安価な財を輸入することで、国内の貪欲な消費意欲を満たしてきた。

 ただ、もたれ合いを続けた結果、巨額な貿易不均衡が累積し、持続性には大きな疑念が生じている。その弊害は、すでに米国では信用バブルの発生と崩壊による金融危機という形で顕在化した。中国でも、所得不平等の拡大、資源の過剰消費、環境破壊が進行し、大きなゆがみをもたらしている。著者はアンバランスの下での繁栄を「偽りの繁栄」と呼び、両国ともいずれは新しいバランスに向けた調整が不可避であると断ずる。

 バランス調整には、中国が内需主導型の経済へと転換すると同時に、米国が国内消費を抑制し、中国向けを中心とする輸出の拡大が必要である。それに向けた調整は、市場で自動的に実現されるわけではない。両国が膨大な努力・自制・時間をかけ、首尾一貫した戦略を立てることが不可欠となる。第3の経済大国である日本の立ち位置も重要となる。

 今日の世界経済は、調整に向けた道を一歩踏み外せば、もたれ合いの関係がたちまち不安定化し、深刻な危機のスパイラルに陥る可能性を秘めている。各国が協力して、世界経済の安定に向けた取り組みを推し進めることが重要である。ただ、近年、安定に向けた各国間の合意形成が難航し、主要国間でさえ足並みが乱れるケースも散見されている。これからの世界経済の相互依存関係はどうあるべきかを改めて考えさせる格好の材料を提供する力作といえる。

(東京大学教授 福田 慎一)

[日本経済新聞朝刊2015年4月12日付]

アメリカと中国 もたれ合う大国

著者:スティーブン・ローチ
出版:日本経済新聞出版社
価格:3,024円(税込み)