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装着型ロボット、「実力」試す

2015/4/17 日本経済新聞 プラスワン

最近、よく話題にあがるのが体に着けて使う装着型ロボット。重い荷物でも楽に持てるため、将来的に高齢者など筋肉の力が弱った人の生活に役立つと期待されているらしい。ではどんな場面で、どのぐらい使えるのか。実用化されたものを自分で身に着け、「現在の実力」を試してみた。

まず訪れたのはイノフィス(東京都葛飾区)。東京理科大学の小林宏教授が立ち上げたベンチャー企業だ。昨年11月、「マッスルスーツ」を60万円(希望小売価格)で売り出した。入浴介護や工場、物流施設などが導入している。

さっそく実物を見せてもらった。背中のゴムチューブが背筋のように伸縮し、荷物を持つ力を助けてくれる構造だ。チューブに圧縮空気を送ると膨らむ力がワイヤを通じて伝わり、腰を引っ張り上げ、太もも部分を押すという。

論より証拠。小林教授の立ち会いのもと、実際に使わせてもらった。

■1人で簡単に装着 最大30キロの補助力

まずは装着。「10秒でできる」という教授の言葉通り、実に簡単だった。背負って腰ベルトを締めるだけ。1人でも簡単にできた。ベルトを締めると5.5キログラムという重さも負担には感じなかった。

約30キロの箱を用意し、スーツを使わず持ってみる。重い。2回、3回と持つと息が上がる。次にスーツを使ってみた。荷物に手をかけた状態でスイッチを入れると、体が強制的に起き上がった。それなのに荷物は自分の腕力で持ち上がっているのか、腕がぷるぷる震えている。この程度の効果なのか。

「腕は伸ばして、もっとスーツに身を委ねて」。小林教授から助言を受けた。反るように起き上がったら、腕が軽くなった。それでも10回、20回とやると疲れてくる。

また教授が口を開いた。「スーツを止めて持ってみて」。持ち上がらない。「スーツを使ってみて」。スーツが体を起こし、軽く持ち上がる。実力を発揮させるにはコツがあるのだ。「疲れてくるとスーツに身を委ねるようになる。力を抜くくらいがいい」と小林教授は話す。

マッスルスーツは30キロ相当の補助力があるという。普段の生活でも、重い荷物の積み下ろしなどにはすぐにも使えそう。ただ、スーツを動かす圧縮空気を外部から供給する装置がないときは、重さ1.5キロのボンベが必要になる。1本で約13回使えるという。将来的に、スーツを家庭で使う場合は、圧縮空気の調達が問題になるかもしれない。

次に向かったのはサイバーダインの子会社が運営する湘南ロボケアセンター(神奈川県藤沢市)。ロボットスーツ「HAL」を使ったトレーニングなどを行う施設だ。

HALの原理はユニークだ。人が動こうとする際に脳から筋肉へ伝わる微弱な電気信号をセンサーで検知し、モーターが作動。腰を引き上げると同時に太ももを押し、動作を補助する。補助力は力の出し方に連動して変わり、重いものを持つと強くなる。

■介護・建設で採用 個人市場も照準に

同センターの久野孝稔社長に立ち会ってもらい、腰用を試した。まずは背筋や腰の辺りにセンサーを貼る。脳から伝わる信号を検知するためだ。どこに貼るか、自分では見えないので手伝ってもらった方がよさそうだ。あとは本体を腰に着けてベルトを巻く。着けてみると、2.9キロという軽さに驚いた。

HALを着けた状態で20キロのポリタンクを持ち上げてみた。さあ持つぞ、とぐっと力を入れると、腰を押されるような感覚があった。HALを着けないときに比べるとタンクが軽く感じる。持ち上げてからも力を入れている間は補助力が働いており、きちんと支えられていると実感した。

今度は同じようにしゃがんでポリタンクに手をかけて、力を抜いてみた。HALは動かない。力を入れない限り腰を押されることがない。次に、荷物を30キロに増やした。自力だけではだめだが、HALの助けを受けると、どうにか持ち上がる。効果は確かだが、もっと楽にしてくれてもよさそうなものだが。

もっとも、HALが想定するのは腰を守りながらの長い作業。だから補助力は最大40%に設定してあり爆発的な力は出ない。「中腰作業時にも威力を発揮する」と久野さん。そこでベッドメーキングをやってみた。

ベッド脇で中腰を続けるのは結構つらい。自力のみだと数秒でギブアップ。ところが、HALを着けると、後ろに引っ張られるような感覚がある。モーターが回り続けているのだ。これなら10分ぐらいは耐えられると思った。

HALの腰補助型は大林組が導入を決めるなど、建設や介護施設などで採用が進む。基本はレンタルで、3年契約で月額7万8千円などだ。腰補助の他にも、体が不自由になった人がトレーニングに使うタイプもいろいろある。

装着型ロボットの威力は確かに実感できたがまだ高価。個人向けが身近になるにはもう少し時間がかかりそうだ。

「電動歩行アシストカート」はロボット技術を使い、センサーで動きを制御する
「ラギー」は最高速度が時速5キロ

記者のつぶやき
■乗り物型、坂道らくらく
湘南ロボケアセンターに併設されたロボテラスで、ほかのものもいくつか試してみた。
「電動歩行アシストカート」(RT.ワークス)はロボット技術を使い、センサーが利用者の挙動を検知して歩行を助ける。ハンドルを押せば前に動き、坂で立ち止まってもブレーキがかかり後退しない。折り畳み式の電動スクーター「ラギー」(クラモト)は最高速度が時速5キロ。足腰が不自由な人でも楽に移動できそうだ。
重い荷物を持ち続けた後だけあって、乗り物系は快適だった。作業支援ロボは補助があるとはいえ腰や腕への負荷はゼロではない。翌日は予想通り筋肉痛。日ごろの運動不足を痛感した。
(河尻定)

[日経プラスワン2015年4月11日付]

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