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歌舞伎座4月公演 新鴈治郎、家の芸で真価発揮

2015/4/10 日本経済新聞 夕刊

翫雀(かんじゃく)改め四代目中村鴈治郎襲名の歌舞伎座。三代目だった実父が坂田藤十郎となったために、まだ元気で活躍中にその名を継ぐ珍しいケースだ。とはいえ、蓄えた実力は十分。「廓文章(くるわぶんしょう)」は新鴈治郎の伊左衛門に藤十郎が恋人役の夕霧で父子共演、襲名の実を挙げた。劇中半ばで喜左衛門役の幸四郎の引き回しで披露の口上をするが、幕切れ、華やかに大勢がそろったところでした方がよかった。

新鴈治郎は「河庄」の治兵衛で真価を発揮。曽祖父の初代以来、鴈治郎家の芸の核心ともいうべきこの役で立派な成果を挙げたことは、その名に恥じぬ襲名であることを示すもの。梅玉の孫右衛門、芝雀の小春も充実。染五郎と壱(かず)太郎が憎まれ役の太兵衛と善六を好演したのも得点の内。

もう一つの家の芸「碁盤太平記」は戦後2度目、40年ぶりという珍品。近松門左衛門の原作は「仮名手本忠臣蔵」の先行作だが、初代の芸を生かして改作した脚本がかえって上演を難しくしてきた。扇雀、染五郎、壱太郎らで挑んだ今回、一風変わった小編としてよみがえった。東蔵と孝太郎の好助演も見逃せない。

幸四郎が「石切梶原」をいつもの「鶴ヶ岡八幡宮」ではなく「星合寺(ほしあいでら)」の場にしたのも鴈治郎家の型に従ったため。壱太郎の梢が大健闘、錦之助の俣野がいい役者ぶり。

襲名を祝うごちそうは左団次の僧正遍照、仁左衛門の文屋康秀、梅玉の業平、菊五郎の喜撰、吉右衛門の黒主に魁春の小町、芝雀のお梶と当代の大顔合わせによる「六歌仙」の全曲上演。これぞ大歌舞伎。適材が適所についた面白さが心地よい満腹感を与えてくれる。一座総出演の「芝居前」に一家水入らずの「口上」の二段返し。染五郎、壱太郎、虎之介の舞踊「石橋」で一日を締めくくる。26日まで。

(演劇評論家 上村 以和於)

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