欧米の古道具を品定め 「のみの市」を楽しむ方法

長い歳月、人の手を経てきた古い物にひかれ、暮らしに取り入れる若い世代が増えている。東京では最近、欧米の古道具などを揃えたのみの市が人気だ。ヨーロッパのマーケットさながらの、気軽でおしゃれな雰囲気が魅力だという。

古き良き物と一期一会

店主から商品のエピソードや使い方を聞くのも楽しみのひとつ(東京都渋谷区)=写真 遠藤宏

ある土曜日。青山通りに面した国連大学前広場(東京都渋谷区)は多くの人出でにぎわっていた。ここで「青山ファーマーズマーケット」とともに毎週土曜日に開かれているのが、主に欧米の古道具や古着が並ぶ「青山ウィークリー・アンティークマーケット」だ。

「ヨーロッパ各地には、生活に根差した古い物を売るのみの市がたくさんある。量産品とは違う物を部屋に飾りたい、身に付けたいという人たちが気軽に探しに来ている」。そんなヨーロッパスタイルのマーケットを目指して始めたと話すのは、主催者の塩見和彦さんだ。「だから骨董的価値よりも、暮らしへの取り入れやすさを重視した品揃えになっている」

例えば、同マーケットに月1~2回出店している「スーヴニール・ド・パリ」の山端朱美さんは、フランスとベルギーののみの市で仕入れたセンスのいいフォークやナイフ、皿、グラスなどを売る。山端さんのセレクトにひかれて立ち寄った石原麻衣子さん(31)は、20世紀初頭の銀のフォークを3本1500円で購入した。「ほかで買うより安いし、山端さんと趣味が合い、話が盛り上がったから」と石原さん。

「若い人に古い物の良さを伝えるのが楽しい。また来てもらいたいから、値段設定をできるだけリーズナブルにしている」と山端さんも話す。物を介して、店主と客が気軽にコミュニケーションできるのは、のみの市の醍醐味だ。直接やりとりするからこそ、長い歳月を経た物が秘めるストーリーも伝わりやすい。

オランダの酒瓶とフランスのバレリーナ人形を組み合わせたオルゴールやアルゼンチンのタクシーメーターなどが並ぶのは「中村商店」のブース。店主の中村文昭さんが世界中を旅して、自分が面白いと思った物を買い付けてくる。

物色していた常連の風間由里さん(36)は「古い物の魅力は、ほかにない一点ものであること」と言う。のみの市は、そうした古い物が一堂に集まっていて、一期一会の出合いを楽しめる場所だ。「出店者の審美眼や価値観で選んだ物が売られているのもポイント。素人が中古品や不用品を安く売買する、いわゆる“フリマ”との違いはそこにある」と塩見さんは話す。

30代中心に人気呼ぶ

東京オーヴァル京王閣(東京都調布市)で年に2回開催される「東京蚤の市」も、ヨーロッパのマーケットを手本に、暮らし周りの古い物を集めた大規模な青空市だ。約200を数える出店者は、すべて主催の手紙社が探して招いた、確かなセンスの持ち主ばかり。

同社の加藤周一さんいわく「個性ある出店者たちの品揃えと工夫を凝らしたディスプレーは、見て回るだけで楽しい。きっとインテリアやファッションの参考になるはず」。ポストカードや薬瓶といった小さな物から大きな家具まで、1日中いても見尽くせないほどのボリュームだ。「このマーケットで部屋のインテリアすべてを揃えようという若い人もいる」

出店者も来場者も30代前後の世代が多い。寺や神社で開催される従来の骨董市に、年配の骨董コレクターが集まるのとは対照的だ。

「東京蚤の市」が、来場者数約2万人と人気を呼んでいるのは、そのエンターテインメント性にもよるだろう。昔懐かしいジャズの生演奏やパントマイムの大道芸、工作ワークショップなど、多彩なイベントが会場内で繰り広げられる。選び抜かれたフードやドリンクの露店も出て、食の楽しみにも事欠かない。「どこを歩いても何かしらの発見がある」(加藤さん)

陽気がよくなるこれからの季節、古き良き物を探しに、そんなのみの市に出かけてはいかがだろうか。

(ライター 松田 亜希子)

[日経プラスワン2015年4月4日付]

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