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脈の打ち方で病気がわかる? 自分で測って体調管理

2015/3/26 日本経済新聞 プラスワン

 指で触れるとトントン…とリズムを刻む。自分の脈を測ったことがあるだろうか。脈は安静時と運動時では違うし、その日の体調によっても変化する。心臓などの病気の発見にもつながることも。健康状態を知るバロメーターにもなる「脈をとる」ことについて、専門家の話を聞いた。

 1日に約10万回。心臓は一定のリズムで拍動を繰り返し、全身に血液を送り出している。この拍動が手首などの動脈に伝わったものが、脈だ。拍動の源は、心臓内の洞結節という場所から発生する電気刺激。この刺激によって心臓の筋肉が収縮と拡張を繰り返し、拍動が生まれる。

 健康な成人の場合、安静時の脈は1分間に50~100回程度。個人差はあるが、70回前後の人が多い。運動したり、緊張したりすると速くなり、就寝時やリラックスしているときは遅くなる。「また、心臓などの病気があっても、速さやリズムが乱れる。日頃から自分の脈の状態を知っておくと健康管理に役立つ」と心臓血管研究所所長の山下武志さん。

 脈をうまくとるコツはあるだろうか。「人さし指と中指、薬指の3本の指で、少し強めに押すと脈が触れやすい」と話すのは、東邦大学医療センター大橋病院循環器内科教授の杉薫さんだ。

 手首の橈(とう)骨動脈は、手のひら側の人さし指から引いた線が手首と交差したあたりにある。人によって多少位置が違うので、指をずらして探し当てる。「初めは1分間測って回数やリズムを確かめる。慣れたらもっと短くしてもいい」(杉さん)。手首が難しい人は、首の頸(けい)動脈で測ることもできる。

■脳梗塞の原因に

 脈の異常は不整脈と呼ばれる。脈が「速い」「遅い」「飛ぶ」「不規則」の4種類に分けられるが、最近、特に注目されているのが、脈が不規則になる「心房細動」だ。

 「心臓の中で血液をためる心房という場所が1分間に350回以上細かく震え、脈がバラバラになる。心臓の老化が原因」と山下さん。

 心房細動自体は命にかかわらないが、脳梗塞の原因になりやすい。心房の収縮力が落ちるため、血液がよどんで血栓(血の塊)ができ、これが脳まで運ばれて血管を詰まらせる。脳梗塞の中でも最も重症になりやすいタイプといえる。

 動悸(どうき)や息切れ、胸の違和感などの症状が出ることがあるが、無症状の人も多く、脳梗塞を起こして初めて気づく例も少なくない。こうした隠れた心房細動を見つける方法の一つが「脈をとること」と山下さん。「脈が不規則に乱れていたら循環器内科や循環器科を受診するように」と説く。

 高血圧が引き金になる脳出血は、血圧を管理することで激減した。心房細動による脳梗塞も脈を測る人が増えることで減らしていけるはずと山下さんは期待している。

 不整脈で一番多いのは、トントントトンなどと脈のタイミングがずれる「期外収縮」だ。一瞬ドキンとしたり、脈が飛んだりしたように感じる。これは健康な人の8割が経験しているともいわれ、あまり心配がいらない。「ただ、疲労や睡眠不足などが引き金になっているので、休みなさいという体からのサインと受け止めて」と杉さん。

 脈が飛ぶのは、ほとんどが期外収縮だが、なかには脈がゆっくりになる徐脈(房室ブロックや洞不全症候群など)でも起きることがある。

■危険な「めまい」

 「脈だけでは見分けがつかないので、心電図検査が必要。胸がもやもやする、ちょっと動いただけで息切れがする、引きずり込まれるようなめまいがある、失神するという人は必ず受診するように」と杉さん。特に、めまいや失神は不整脈のタイプを問わず、非常に危険なサインだという。

 また、安静時の脈が1分間に100回以上ある頻脈の場合も病気が隠れていることがある。多いのはトトトト…と速い脈が規則正しく続く「洞頻脈」だ。運動や緊張、発熱、飲酒などでも起きることが多く、ほとんどは心配ない。それでも「慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺の病気や甲状腺機能亢進(こうしん)症、貧血など、心臓以外の病気が原因のこともある」(山下さん)。

 脈は、血圧などと同様、日常的に測っておけば体調のバロメーターになる。「ただし、神経質になると、かえってストレスになる。毎日でなくても体調が悪いときや思い出したときなどに測ればいい」と杉さんは話す。

◇            ◇

■風邪のひき始めなど推測

 漢方でも古来から脈で病気を探る「脈診」という診断法がある。左右の手首に、人さし指、中指、薬指の3本をあてて合計6カ所の脈をとる。各ポイントは特定の臓器の病態を反映しているそうだ。

 「数や速さ、リズムだけでなく、脈が触れる位置が浅いか深いか、脈の勢いが弱いか力強いか、滑らかか途切れるかなどをつぶさに読み取る。脈という局所から全身を診るのが、漢方の脈診」と東邦大学医学部客員教授で、吉祥寺東方医院顧問の三浦於菟さんは話す。

 浮脈、沈脈など、脈の種類は28ほどあり、風邪のひき始めやストレスによる緊張、妊娠なども脈診で推測できるという。

(ライター 佐田 節子)

[日経プラスワン2015年3月21日付]

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