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ブームの予感(日経MJ)

陶芸家が考えたサンドイッチ「沼サン」 SNSで育つ

2015/3/18 日経MJ

一人の男性が考案した千切りキャベツを大量にはさんだサンドイッチ「沼サン」が注目を集めている。パンを半分に切り分けたときの断面はキャベツの緑色を中心にカラフルで、「おしゃれな朝食」として女性に人気だ。材料次第で独自の彩りと味を出せることも作り手の創作意欲をかき立てるようで、交流サイト(SNS)にはオリジナルの沼サンが続々と投稿されている。

■キャベツ満載、食費の節約で生まれた一品

「沼サン」を作る大沼道行さん(岩手県紫波町)

沼サンの考案者は岩手県紫波町に住む陶芸家の大沼道行さん(51)だ。妻の由樹さん(43)が独特なサンドイッチを道行さんの愛称「沼夫」をもとに「沼夫サンド」と命名、略して沼サンになった。

沼サンは簡単に作ることができる。食パンを2枚用意し、1枚はそのまま、もう1枚はベーコンとチーズを載せて焦げ目が少しつくまで焼く。焼きあがったら何も載せていない1枚に粒マスタードを塗り、マヨネーズと黒コショウであえた千切りキャベツとスライスしたタマネギを「これでもか」というくらい載せていく。

具材が落ちないよう、素早くパンを重ねあわせる。パンが押しつぶれるほどぎゅっと圧力をかけ、パンと具材をなじませれば完成。半分に切るとキャベツの緑色やベーコンのピンクで鮮やかな断面が現れ、通常のサンドイッチと見た目がだいぶ違う。ほおばると、口の中でベーコンの塩気、マスタードの辛み、マヨネーズの酸味が絶妙に絡み合う。キャベツのシャキシャキ感が味わえ、ボリュームも満点だ。

道行さんは陶芸の修業に打ち込んだ20代の頃、食費を節約するため、安くて多くの料理に使えるキャベツを買いだめしていた。時間のない朝にキャベツをどうやっておいしく食べられるかを考えた末に、たどり着いたのが沼サンだった。

■自作の沼サン、サイトに続々と投稿

今年2月上旬、由樹さんが写真共有SNS「インスタグラム」にレシピを投稿したところ、ユニークさが受け、自作の沼サンを投稿するユーザーが出てきた。それを料理レシピサイト運営のクックパッドがニュースとして紹介し、沼サン人気に火がついた。投稿前は数百人程度だった由樹さんのインスタグラムのフォロワーは1万人にまで増えた。

川崎市の主婦、田端ひとみさん(42)は1週間に1~2回、沼サンをつくるという。その魅力を「カラフルだし、断面がスパッと切れているのも美しい」と話す。冷蔵庫にある材料で手軽にできることに加え、思わず誰かに見せたくなる断面の美しさが沼サンファンを増やしている。

沼サンを紹介したクックパッドの小菅祥江さんによると、ただのトーストではなく、栄養バランスのとれた朝食のニーズが高まっている。フレンチトースト風の生地にベーコンやチーズをはさむカナダ発の朝食「モンティクリスト」が代表例。たくさんのキャベツを食べられる沼サンは、その流れにも乗っているようだ。

沼サンの材料はキャベツとベーコン、チーズが基本だが、アレンジが自由なことも人気の一因だ。「作り手の創意工夫で、切り口に個性が出てくる。いろいろ試そうと夢中になってしまうようだ」(小菅さん)。田端さんはキャベツにマリネしたニンジンを加え、食パンの代わりにマフィンではさむのがお気に入りという。「切り口にニンジンの赤が入ってよりカラフルになる。味も塩気が増して、さっぱりしたキャベツと合う」

埼玉県所沢市の主婦、岩崎百合子さん(47)は半熟の目玉焼きを加える。「白色と黄色が入ってとてもきれいな断面になる。キャベツやベーコンとの相性もばっちり」。中学校の部活動のあと、習い事へ行く息子(13)のためによくつくる。野菜が多めで、おなかにもたまる補食としてちょうどいいという。

クックパッドには沼サンをアレンジした約30のレシピが掲載され、いまも増え続けている。具材にコロッケや焼きそば、ビビンバを加えたり、カレーペーストで味付けしたりと、個性豊かな沼サンが続々と誕生。岩崎さんは「今度は具材に豚カツを試すつもり」と楽しそうだ。

「20年以上前につくった一人暮らし男の貧乏飯がこんなに広がってしまうとは」。生みの親である道行さんは驚く。沼サンは、育児や仕事に忙しい女性の強い味方になっている。(福田航大)

[日経MJ2015年3月18日掲載]

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