「物忘れ」や「抗加齢」も 人間ドック、上手に選ぶ

もうすぐ企業などでは新年度の定期健診(健診)が始まる。なかには人間ドックで会社や自治体で受けられない項目を追加する人もいる。ニーズの多様化や新たな診断機器の開発などに伴い、人間ドックの選択肢も広がっている。注目の検査項目や、自分に合った追加項目の選び方などについて専門家の話をまとめた。

人間ドックの追加オプションで最近関心が高まっているのが、こころの健康状態を調べるもの。その一つが、メンタルドックだ。

■うつ病の芽つむ

例えば、東京慈恵会医科大学、総合健診・予防医学センターでは、「メンタルサポート」という専門ドックを展開している。精神神経科医による30分程度の面談で、こころの状況や治療の必要性の有無を診断する。同センター教授の和田高士さんは、「自分では認識していない悩みを把握できるとともに、うつ病などの大きな不調の芽を摘む助けになる」と説明する。

こころの健康については、労働安全衛生法の改正により、従業員数50人以上の事業場ではストレスチェックが義務づけられ、今年12月から運用が始まる。調査票で自分の心理的な負担の状況を把握し、こころの不調を未然に防ぐことを目指す。

65歳以上の4人に1人が認知症とその予備軍と推計される中、物忘れドックも注目されている。問診や画像診断、各種テストにより、記憶力や言語能力、脳の萎縮の度合いなどを確認。早期発見で進行を遅らせることを狙う。「症状が出る前の脳の状態を確認しておくと、より早い段階で変化を把握しやすいというメリットがある」と日本大学病院健診センター医長の高橋敦彦さん。60代前半までに一度受けておくといいだろう。

高橋さんは、「最近では疾病の早期発見から一歩進み、(自立した生活を送れる期間である)健康寿命を延ばすための検査も増えている」と指摘する。

アンチエイジングドックはそうした考え方に基づくものだ。体の酸化を抑える力の指標(抗酸化能)、動脈硬化の状態などを検査し、自分の加齢の度合いを見る。

全身の健康との関連がクローズアップされている口の状態を確認するために、歯科ドックは30代から定期的に受けておきたい。

がん検診など、疾病の早期発見を目的とする検査は、年齢や生活習慣など病気になるリスクの高さに応じて自分に必要な項目を選ぶことが大切。

「喫煙者や、家族や職場に喫煙する人がいて長時間煙を吸う50代以降の人は、胸部X線CTによる肺がん検査を受けるべき」と和田さん。

また、血縁家族に大腸がん、乳がん、卵巣がんの人がいれば、それぞれの検査を受けたい。

受診のタイミングとしては、乳がんであれば30代から。ただし若い人の場合、「マンモグラフィーでは病巣がわかりにくいので超音波検査をするように。40代以降はマンモグラフィーと超音波検査を併用する。毎年交互に受けるのも一つの手だ」と高橋さん。

大腸がんは、肉の多食、飲酒などでリスクが高まるので、50歳を超えたら受けるといい。「最近では、腸に炭酸ガスを入れて撮影したCT画像で診断する大腸CTもある。小さな病変の発見が難しい面があるが、内視鏡が苦手な人の選択肢になる」(高橋さん)

苦痛を軽減できるものでは、鼻から内視鏡を入れて胃や食道がんなどを検査する経鼻内視鏡検査も一般的になってきた。従来の検査に比べて吐き気などを抑えられる。

心疾患や脳血管疾患の原因となる動脈硬化の状態を確認する頸動脈超音波検査などは50代以降に受けたい。また、心臓病の家族歴があり、生活習慣病がある人は、60代に入ったら運動負荷心電図やCT画像から心肺に酸素を供給する動脈の状態を見る冠動脈CTで狭心症や心筋梗塞をチェックする。

■検診結果は保管

人間ドックの結果を十分に活かすには、何より時間による変化を見ることが大切だ。「健康な状態は人それぞれ。一般的な基準値が自分にとっては不健康な状態かもしれない。定期的に検査を受ければ、以前との比較から異常を見極めやすくなる」と高橋さん。そのためには、検診結果をすべて保管し、ドックの際に持参するといい。

受診施設を選ぶときには、検査結果を丁寧に説明してくれることが重要だ。説明内容や説明にかける時間などを事前に確認するといい。

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脳ドック、受検は医師と相談を

血縁者にクモ膜下出血にかかった人がいる場合に、動脈瘤(りゅう)の有無や動脈硬化などを見る脳ドックは、発症リスクを知るための心強い味方といえる。

ただし、検査結果の受け止め方については注意も必要だ。高橋さんは「動脈瘤はごく小さなものも見つかることがある。将来破裂するかどうかわからない動脈瘤の手術で悩む可能性がある」という。

検査は、それをきっかけに生活習慣を改善できるなどの利点があるかもしれない。半面、脳の問題だけに過剰な心配につながりやすい面もある。検査を受けるべきか、あらかじめ医師と相談するなど慎重に対応しよう。

(ライター 武田 京子)

[日経プラスワン2015年3月14日付]

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