ビジネス書、モノにするコツ 著者の職業・経歴に注目「はじめに」で趣旨つかみ メモ作成、ブログで発信

ビジネス書を読んで日常の仕事やキャリアアップに役立てようと考える人は多いだろう。しかし最後まで読み通せなかったり、読んだものの内容を忘れたりした経験はないだろうか。ビジネス書を上手に活用するためのポイントを知っておこう。

「この間、分厚い本を読んでたようだけど、どんな内容だった?」。同僚とのランチタイム。急にこんな質問を投げかけられた会社員、山田吉彦さん(仮名)はどぎまぎした。張り切って評判のビジネス書を読み始めたが、最初の10ページくらいで退屈し、投げ出したのだ。

書評家で、起業支援などを手掛けるアンテレクト(東京・中央)社長の藤井孝一さんは「ビジネス書を読みこなせば、仕事での発想力や実行力を高めることができる」と強調する。ただ趣味や娯楽で読む本とは違い、読むコツがあるという。

ではどんな点に気を付ければいいのだろうか。まず本の選び方が重要だ。出版コンサルティングなどを手掛けるエリエス・ブック・コンサルティング(東京・渋谷)の土井英司さんが注目するのは著者のプロフィル。職業や経歴などをチェックし、専門分野で実績を重ねている著者を選ぶ。インターネットで検索し、最近の活動などを確認するのもいいだろう。

本のレベルが偏らないようにするのもポイント。「1つのテーマで入門書、名著、新刊書の最低3冊はそろえよう」と土井さんは助言する。入門書は漫画やムックなどなるべく簡単に読めるものがお勧めだ。

初心者はどれが名著か判断するのが難しいかもしれないが、発行年が古く、版を重ねていることが目安になる。「名著を読んで基礎知識を得てから最近売れているものを読むと理解しやすい」と藤井さん。新しい情報を得たいときも発行年に注意する。最新刊でないと情報の鮮度が落ちている可能性がある。

本をそろえたら次は読み方。大切なのは読書の目的を見失わないこと。「○○の成功条件や背景を知る」「○○のノウハウをつかむ」など問題意識を持って読み進めると、読んだ情報が生きてくる。

■おそれずに「汚す」

ビジネス本は教科書や小説ではないので、すべてのページを読む必要はない。本文の前にある「はじめに」をまず読む。本の趣旨、読みどころのヒントなどが書かれていることが多いからだ。次に目次に目を通し、気になった章を読んでいく。図版も大切な概念、データ、手法が盛り込まれていることが多いため注目しよう。

読みながら気になったところはペンでチェックしたり、付箋を貼ったりする。土井さんは3色ボールペンの赤で「大切な箇所」「後で調べる箇所」に線を引き、青で「文章を書くとき参考にしたい箇所」を囲む。黒で気づいたこと、調べたことなどを余白部分に書き込む。藤井さんも「本は自分の思考、知識を深めるための土台。汚してもいい」と話す。

ビジネス書は読んだあとのアウトプットが欠かせない。第一歩は自分の考えをまとめること。「自分の仕事にどう生かせるか」「書いてあることは正しいか」といった視点から考えたり、検証したりする。例えば数字などのデータは直近のものをネットで探す。本で取り上げた業界に知り合いがいれば、最近の事情を聞くのもいいだろう。

藤井さんが勧めるのが読書メモの作成。A4サイズの方眼ノートに書名や読んだ日の日付を入れ、内容のポイントを書き出す。自分で調べたことや問題意識も記入する。もちろんパソコンで作業しても構わない。

■読書会で意見交換

考えをまとめたら人に伝える場を作ろう。他人の目を意識すると、より分かりやすく本の内容やポイント、自分の考えをまとめようという姿勢が生まれ、知識として身につきやすい。例えばブログやSNS(交流サイト)で発信するのが一案だ。ブクログ(東京・渋谷)が提供する「ブクログ」、トリスタ(東京・中央)の「読書メーター」など本の要約や感想などを投稿し、コメントを共有できるサービスは増えている。

読書会に参加するのもいいかもしれない。自分の読んだ本を紹介したり、同じ本を読んで感想や意見を交換したりする読書会に参加する人は広がりつつある。どこで、どんな読書会が開かれているかはインターネットで探すこともできる。

ビジネスコンサルタントで作家の大石哲之さんは「読みながら考え、そして行動すると自分の血肉になる」と話す。ビジネス書を読むコツを身に付け、仕事のレベルアップを目指そう。

(ライター 西川 敦子)

[日本経済新聞夕刊2015年3月9日付]

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