働き方・学び方

イチからわかる

選挙権の年齢 なぜ18歳に?

2015/3/10 日本経済新聞 プラスワン

イチ子お姉さん 選挙で投票できる年齢(ねんれい)が「20歳(さい)以上」から「18歳以上」に引き下げられそうね。2年早まったら、からすけの選挙デビューももうすぐね。
からすけ 20歳以上の人は大人(おとな)や成人(せいじん)っていうよね。投票できるのが18歳からになると、大人として認められる年齢も18歳に早まるのかな?

■若者の声、政治に取り込む

イチ子 いま開かれている国会に、選挙の決まり事を定めた公職選挙法(こうしょくせんきょほう)という法律の改正案が提出されたわ。選挙で投票する権利を選挙権(キーワード)というんだけど、その年齢を現在の20歳以上から18歳以上に引き下げようとしているの。

からすけ 選挙に行くのは20歳になってからだと思っていたよ。

イチ子 私も初めて投票したのは20歳のとき。大人になったんだと実感したわ。実は選挙権の年齢を引き下げるのは1945年に「25歳以上」を今の20歳以上に変えて以来、70年ぶりの変更になるそうよ。

からすけ 18歳といえば普通(ふつう)は高校3年生。そう考えると、もうすぐだ。

イチ子 そうね。法律が今国会で改正されたら、公布から1年後に施行されるわ。だから来年夏の参院選(さんいんせん)から高校3年生も投票できるかもしれないの。選挙権を持つ人を有権者というんだけど、来年は18~19歳の新たな有権者約240万人が投票に参加できるようになりそうだわ。

からすけ 選挙って、さっき言ってた参院選と、あとは衆院選(しゅういんせん)だっけ?

イチ子 選挙は国会議員を選ぶ参院選や衆院選だけではないわ。知事、市長、町長といった地方公共団体の長や、県会議員、市会議員などの地方議会議員を選ぶ選挙にも参加することになるわ。

からすけ 選挙に投票するだけでなく、立候補も18歳からできるのかな。

イチ子 そこは今までと変わらないわ。被(ひ)選挙権というのだけど、衆院と地方議員は25歳以上、参院と知事は30歳以上のままよ。でも心配しなくても中学校の生徒会長や学級委員の選挙には出られるわ。

からすけ 気が向いたら立候補するよ。それにしてもなぜ今、投票できる年齢を下げようとしているの?

イチ子 まず、世界を見渡せば18歳から投票できるのは当たり前というのがあるわ。国が調査できた191カ国・地域のうち、9割にのぼる176が18歳に選挙権を認めていたわ。なかにはブラジルやオーストリアのように16歳から認めている国もあったの。

からすけ ふーん、そうなんだ。

<キーワード>
選挙権 憲法で保障された国民の権利。以前は財産によって制限されたり女性には認められなかったりした。
成年年齢 身体的、精神的に成熟したと判断され、成人としての権利を与えられる年齢。20歳未満は未成年者。

イチ子 若い人たちに、選挙を通じて政治に対してもっと意見を出してほしいという狙いもあるの。2014年12月の衆院選で年代別の投票率をみると、最も若い20~24歳が29.72%と最低だった。一方、70~74歳の投票率が最も高くて72.16%に上ったの。

からすけ おじいさん、おばあさんは熱心だね。

イチ子 それより政治に関心を持たない若者の方が深刻な問題ね。政治家だって選挙に勝つためには票が得られる世代を意識するから、高齢者に痛みを伴う政策には及び腰になりがち。その分、これから社会に出る若者にしわ寄せがいくといわれているの。若者の声を生かさないと政策がゆがんでしまうのよ。

■現行の20歳、世界では少数派

からすけ ところで選挙権があるということは、18歳は成人ということ?

イチ子 その2つは切り離して考える必要があるわ。成人を意味する成年年齢(キーワード)は民法という法律で20歳と定められているの。公職選挙法を改正しても、民法の成年年齢を改正しなければ、18歳は成人とならないのよ。でも、選挙権の年齢を下げるのだから、成年年齢も下げようという意見も多くあるわ。成年年齢も国際標準では18歳なの。

からすけ 成人が18歳になったら、お酒も18歳から飲めるようになるんだね。

イチ子 今、20歳で認められていることがすべて18歳でも認められるとは限らないわ。飲酒のほか結婚(けっこん)、裁判など年齢によってできることとできないことを決めた法律などはたくさんあって、300を超えるの。民法が改正されて成人の定義が変わったとしても、それぞれの法律などを変えるのは相当な時間がかかるといわれているのよ。

■昔は財産や性別で制限

渋谷教育学園渋谷中学高等学校の真仁田智先生の話
成人になる年齢と選挙権を持つ年齢は、いつも同じだったわけではありません。明治政府は満20歳を「丁年(ていねん)」と定めて徴兵制(ちょうへいせい)の基準にも採用し、1890年に制定された民法で「成年」としました。しかし、同年の第1回衆院選の選挙権は、居住地や財産、性別の制限に加えて、年齢も25歳以上のごく一部の人に限られました。戦後、男女普通選挙法が制定され、選挙権は20歳に引き下げられました。
そして今、選挙権は18歳に引き下げられようとしています。若い人は政治に無関心といわれますが、昔も今も若者は時代の変化には敏感(びんかん)です。少子高齢化やグローバル化のなかで日本はどうすべきか。自分たちが直面する問題です。学校でも生徒が調べて意見を交わす「アクティブ・ラーニング」という課題解決型の授業を取り入れる工夫が始まっています。
今週のニュースなテストの答え 問1=就職活動、問2=スカイマーク

[日経プラスワン2015年3月7日付]

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