クラフトビール 自分好みの味をみつけるには…
薄い色から飲み比べ
東京都千代田区の「常陸野ブルーイング・ラボ」。2月半ば、友人と2人で来店した30代の女性は「3種類を飲んだけれど、それぞれ味が違うのが楽しい。一番気に入ったのはお店限定のIPA(インディアペールエール)。香りが最高です」と頬をゆるめた。
同店は茨城県那珂市の木内酒造が今年1月にオープンし、約10種類の「常陸野ネストビール」を味わうことができる。店内には麦汁づくりを体験できる仕込み釜が置かれ、棚には原料となるホップのサンプルなどが並ぶ。渡辺誠店長は「自分が好きな味がどうしてできるのかも考えながら楽しんでほしい」と話す。
クラフトビールはもともと地ビールと呼ばれていた。1994年の酒税法改正で規制が緩和され地ビールブームが起きたが、味や品質が不安定だったことなどで人気は低下。ただその後、世界的に高い評価を受けるビールも増え人気が徐々に回復。現在は小規模なブルワリーで造ったビールを作り手のこだわりに敬意をこめてクラフトビールと呼ぶことが多い。原材料によっては酒税法上は発泡酒と表示されるものもある。
人気の理由は様々な種類(スタイル)を楽しめることだろう。細かく分けると100を超える。クラフトビールの主流はフルーティーな香りのあるエールタイプ。苦みや甘みも多様で、黄金色から深い黒色まで、見た目の違いも楽しい。
一般的には色が濃くなるほど苦みやアルコール度数が高くなるので、薄い色から濃い色の順に試してみるのがいい。くせになる苦みを味わいたいならIPA、ビールが苦手な女性には甘酸っぱいフルーツビールなどがおすすめだ。
クラフトビールを取りそろえるビアパブでは、来店客の半数近くを女性が占めることも珍しくない。料理や内装にこだわる店も増え、「とりあえずビール」ではなく料理に合わせてじっくり味わうスタイルが広がっている。「冷やしすぎていないので冬でも飲めるのがうれしい」と話す女性客も多い。
まずは自分の好みを見つけてそれを基準に飲み比べてみるのもよさそうだ。NPO法人、日本の地ビールを支援する会(東京都北区)の吉田茂さんは「手作りしたクラフトビールは同じ銘柄でもちょっとずつ味が変わることもある。毎回新たな出合いを楽しんでみては」と話す。
香り味わうグラス選び
クラフトビールの楽しみ方や料理との相性について、東京都墨田区の「麦酒倶楽部ポパイ」のオーナー、青木辰男さんに聞いた。同店は国内外合わせて100種類ものクラフトビールを扱い、ビールによってガス圧や温度を変え、ビールに合わせたオリジナル料理にもこだわる。
青木さんによると、エールタイプのビールはキンキンに冷やしてゴクゴク飲むのはNG。ワインを味わうように、まず色をみて鼻を近づけて香りを楽しんでから口に含む。口の中全体で味わいながら、最後に炭酸が喉を通る心地よさを感じるのがおすすめだ。
グラスの形の違いは見た目に楽しいだけでなく、ビールの個性を引き出す役割も大きい。自宅にあるワイングラスを使って飲み比べして香りの違いをみるのもいい。ただ冷やしすぎると香りなどを感じにくくなるので、冷蔵庫の野菜室などを活用するのも手だ。
主なビールと料理との相性は表に示したが、バナナやイチゴの香りが特徴的なバーレイワインなど、スイーツに合わせてもおいしいビールもある。青木さんは「ホップの苦みの強いビールはチョコレートと一緒に食べることで、ビールの新鮮な苦みを再び感じることができます」と教えてくれた。
(高田哲生)
[日経プラスワン2015年3月7日付]
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