ソロモンの偽証 前篇・事件現代の欺瞞、子供たちの反乱

この国はどこに行くのか。何を信じればいいのか。真実はどこにあるのか。

そんな時代の危うさをいち早く察知するのは子供たちかもしれない。宮部みゆきの小説を原作とするこの映画は、バブル期の中学校の事件を描くが、その射程は社会への不信感が充満する現在の日本に及ぶ。

雪の朝、校庭で男子生徒の死体が発見される。警察は自殺と断定するが、殺人を目撃したという匿名の告発状が校長らに届く。犯人と名指しされた同級生は札付きの不良で、死んだ生徒らをいじめていたという。

学校と警察は告発状を偽物と判断。生徒を傷つけまいと考え、内密にし、カウンセリングを通して告発者を探る。しかし告発状の存在がテレビでスクープされ、教師も生徒も保護者もパニックに。いじめられていた女子の一人が死ぬ。

生徒を守るためと言って、いじめの真相から目を背ける学校や警察。推測で人を断罪するマスコミ。涼子(藤野涼子)ら同級生たちは大人たちの不作為に憤る。学校の制止を振り切って、自分たちで校内裁判を開くと決め、動き始める。

大人の行動にも理はあるが、それが子供を傷つける。真に悲痛な叫びは届かない。「本当のことを知りたいって、いけないことなの」という涼子の疑問は、秩序維持のために真実の隠蔽へと向かう現代の社会システムの欺瞞(ぎまん)を射抜く。

何よりこの映画の力となっているのは、反乱を起こす子供たちだ。管理社会の下で子供たちが生き残りゲームを強いられる映画は多いが、子供たちが主体的に状況を変えようと動き出す映画はあまりない。

そこには社会と切り結ぶ意志と、それを体現する少年少女のしなやかな身体が欠かせない。成島出監督がフィルムで撮ったこの作品にはその両方がある。新人の藤野らオーディションで集めた若い俳優が躍動する。2時間1分。

★★★★

(編集委員 古賀重樹)

[日本経済新聞夕刊2015年3月6日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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