抗がん剤・ミニ移植… 急性骨髄性白血病、治療多様に

血液のがんである白血病の中で、急速に症状が進むのが急性骨髄性白血病だ。1月に亡くなった元プロ野球選手の大豊泰昭さんもこの病気だった。最初は風邪に似た症状が出ることもある。治療の難しい病気だったが、タイプによっては5年後生存率が6割を超え、完治も見込めるようになっている。

関西地方に住む60代のAさんはある日、微熱に見舞われた。「単なる風邪だろう」と思い市販の風邪薬を飲んだが1週間たっても熱は下がらなかった。そのうち、どこも打っていないのに体に青あざができ、歯を磨くと歯茎から出血するようになった。Aさんは「風邪ではなさそうだ」と考え、近所の病院に駆け込んだ。

血液検査をしたところ、赤血球や血小板が減少していた。この検査結果をみた医師はすぐに血液内科がある専門の病院を紹介。そこで詳しく調べると、白血病細胞という異常な細胞が増えていた。Aさんは入院して治療に取り組むことになった。

■早期治療が肝心

「急性骨髄性白血病はとにかく早く治療することが重要だ」と大阪赤十字病院(大阪市)の通堂満・副院長は強調する。血液中の白血病細胞は1日で2倍程度に増えることもあるという。

血液の成分である白血球や赤血球、血小板のもととなっているのは骨髄にある「造血幹細胞」だ。白血病では、この幹細胞からがん細胞ができ、正常な白血球などができなくなる。白血病の中でもがん細胞が急激に増えて正常な細胞が作られなくなるのが急性で、徐々に進行するのが慢性だ。急性、慢性それぞれに骨髄性とリンパ性がある。

国内の急性骨髄性白血病の患者数は10万人あたり3~4人程度といわれている。成人の白血病では最も発症頻度が高い。発症原因はよく分かっていないが、遺伝する病気ではなく、周囲に感染することもない。

急性骨髄性白血病の患者の血液は白血病細胞ばかりになっている=大阪市立大学の日野雅之教授提供

急性骨髄性白血病は、白血病細胞が急激に増える。患者の体内では白血病細胞が1兆個以上も存在し、約1キログラムの重さにも達するといわれる。正常な細胞が育つ余地がなくなり、白血球や赤血球、血小板が減少する。この結果、さまざまな細菌やウイルスに感染しやすくなり、めまいや息切れといった貧血の症状、出血しやすくなるなどの症状にも見舞われる。

治療では、この白血病細胞をいかに減らすかが目標になる。異常な細胞が減れば、白血球や赤血球なども増えてくるからだ。まずは、患者の血液や骨髄の検査などによって分かった白血病細胞の形状や、遺伝子検査により、どの染色体異常によって起きたものであるか分類する。

■大別して8タイプ

急性骨髄性白血病は大きく8つのタイプに分類できるが、「現在では遺伝子異常などでさらに細かく分けることができる」(通堂副院長)という。この分類にしたがって治療方針を決定する。

治療の成績はタイプによって異なり、5年後の生存率が60%以上のタイプもあれば、20%以下のタイプもある。成績がよいのは急性前骨髄球性白血病で、このタイプだけに効く「レチノイン酸」(活性型ビタミンA)をまず服用する。

通常は最初に抗がん剤を投与し、「白血病細胞を10億個以下に減らす」と大阪市立大学の日野雅之教授は説明する。症状がなくなり、正常な血液細胞の回復がみられる「寛解」という状態に持ち込むのが目標だ。ただ、ここで治療をやめると再発する恐れが高いため、「地固め療法」としてさらに抗がん剤を投与し、「最終的に白血病細胞をゼロにすることを目指す」(日野教授)。

抗がん剤で治療しても再発する場合は、造血幹細胞移植などを検討する。抗がん剤の大量投与などで異常な細胞を破壊してから、正常な造血幹細胞を移植する治療だ。その一つである骨髄移植は、兄弟姉妹などから提供を受けた骨髄を活用する。

白血球の型(HLA)が合っていることが基本で、兄弟姉妹で一致しない場合は、骨髄バンクなどを活用し、一致する人を探す。移植した白血球が患者の体を敵とみなして攻撃する免疫反応の「移植片対宿主病」が起こる恐れがあるからだ。

また、へその緒から採った臍帯血(さいたいけつ)を移植する方法や、血液中に流れ出てくる造血幹細胞を取り出して移植する末梢血(まっしょうけつ)幹細胞移植という方法もある。どの方法を選ぶかについては、担当する医師とよく相談して決めることが大切だ。

細胞移植で最近増えているのが「ミニ移植」と呼ぶ方法だ。移植前に投与する抗がん剤などの量を減らし、患者の負担を通常の細胞移植より減らすことを狙っている。高齢者や臓器に障害がある人にも適用しやすい利点があるという。

急性骨髄性白血病の治療法は進化しており、以前と比べ選択肢も広がってきた。「回復が難しい病気といわれてきたが、今は完治も十分視野に入る」と専門家は口をそろえる。

(新井重徳)

[日本経済新聞夕刊2015年2月20日付]

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