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腎臓病予防、日常生活で 軽い運動でも効果

2015/2/17 日本経済新聞 朝刊

3月12日の「世界腎臓デー」の前後に、日本でも慢性腎臓病(CKD)の啓発イベントなどが集中的に開かれる。CKDは自覚症状がないまま悪化し、人工透析などが必要な重い腎不全になる恐れがある。予防には運動が重要だが、活発なスポーツだけでなく、椅子に座りっぱなしの時間などを減らすことでも予防効果が期待できるという。

■自覚症状出にくく

CKDは高齢者に多い。メタボリック症候群や肥満、高血圧や糖尿病などの生活習慣病がリスク要因になる。悪くならないと自覚症状が出ないため、CKDになっていても気づかない例が多い。早期発見が大切で、それには尿や血液などの腎機能検査が必要だ。

世界腎臓デーは国際腎臓学会などが提案した腎臓病の早期発見などを訴える日で、毎年3月の第2木曜日と定められている。腎臓は英語で「kidney(キドニー)」というが、NPO法人の腎臓病早期発見推進機構(IKEAJ)は3月8日に腎臓病予防のためのウオーキング大会「キドニーウオーク」を東京・市谷周辺で開く予定だ。

12日には東京国際フォーラム(東京・千代田)で厚生労働省が広く一般向けに慢性腎臓病シンポジウムを開催する。会場ではIKEAJが「腎臓検診クリニック」を臨時開設する計画で、腎臓病かどうか分からない人が無料で尿・血液検査を受けられる。

日本慢性腎臓病対策協議会は会場近くで啓発キャンペーンを開くほか、28、29日には日本医学会総会のイベントとして神戸国際展示場(神戸市)で一般向け展示も予定する。

CKDの予防には、カロリーや塩分の取り過ぎなどに注意するほか、運動不足の解消が欠かせない。運動というと毎日ジョギングしたり、スポーツやトレーニングの運動教室に通ったりするイメージがあるが、必ずしもそうした運動ばかりではない。

「座りっぱなしは不健康な習慣だ」。透析患者の運動療法に取り組む国際医療福祉大学病院(栃木県那須塩原市)の安藤康宏教授は、専門家の間で最近こうした考え方が注目されていると強調する。

横になったり椅子に楽に座ったりしている状態を身体活動の強度の単位であるメッツで示すと、1メッツに相当する。「身体的不活発」などと呼ばれ、この状態の時間は健康に悪いことをしているのと同じとされる。

そこで安藤教授は「座りっぱなしで仕事をするのではなく、こまめに立ち上がって伸びをしたり、少し歩いたりするとよい」とすすめる。買い物でも掃除でも階段の昇降でも何でもよいので、体を動かすことが大切だ。

■健康づくりと共通

座りっぱなしなどの状態を減らす考え方は患者の運動療法だけでなく、腎臓病の予防、さらには広く健康のための運動不足の解消に通じるという。運動が必要だと分かっていても三日坊主で終わってしまう人にとって、運動の習慣を長続きさせるのにも役立つ考え方だ。

この運動療法について、安藤教授はピラミッドの構造になぞらえて説明する。一番上がトレーニング的な運動で、一般に運動というとこれを思い浮かべがちだ。効果は高いが、娯楽性が低く負担も大きいと分析する。真ん中が低負担で継続可能な運動、一番下が運動以外の日常身体活動で、これら2つは取り組みやすく効果もあり、重視しているという。一番上を安定させるには下2つの習慣が大切とみている。

実際に栃木県の下野運動療法勉強会(STEC)という運動を楽しむ集まりで実践している。患者以外も多く参加し、中心的なメンバーだけで約50人、ときどき参加も含めれば200人を超える。月に2、3回開く教室では運動メニューにこだわらない。バラエティー豊かにすることで飽きさせない工夫で、これまで28種目を実施した。目標は50種目という。

腎臓病予防に限らず大切な運動の習慣。なかなか身につかない人は日常の身体活動の見直しから始めてはどうだろうか。

(編集委員 賀川雅人)

〈ひとくちガイド〉
《ホームページ》
◆慢性腎臓病の予防法や各地のイベント情報などを紹介する
日本慢性腎臓病対策協議会
(http://j-ckdi.jp/index.html)
◆遊び心のある映像で、慢性腎臓病への注意を促す
CKD啓発動画研究会
(http://www.ckd-ckd.jp/index.php)

[日本経済新聞朝刊2015年2月15日付]

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