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皮膚が赤く盛り上がる…乾癬 日光浴や食事でケアを

2015/2/14 日本経済新聞 夕刊

乾癬(かんせん)は皮膚の慢性の病気だ。皮膚が赤く盛り上がり、表面にはかさぶたのような白い粉ができてぽろぽろとはがれ落ちる。かゆみを伴うケースもあり、生活の質(QOL)低下につながりやすい。根治が難しい病気だが、本人の状態に合わせて適切な治療法を選べば、症状を長期間抑えることも可能という。ただ、厚着になる冬場は症状改善に役立つ日光を浴びる機会が減りがちなので気をつけたい。

乾癬患者は国内に推計で10万人以上いる。女性より男性に患者が多く、子供から高齢者まで発症する。原因はよくわかっていないが乾癬になりやすい体質に、感染症やストレス、食生活、肥満などの要素が加わり発症すると考えられている。

病原体などから身を守る免疫機構の異常が関わっていることも最近の研究でわかってきた。病名から周囲に感染すると誤解されることもあるが、「うつることは決してない」と東京逓信病院(東京・千代田)の江藤隆史皮膚科部長は話す。

この病気は症状によって細かく分類できる。約9割を占めるのが「尋常性乾癬」だ。頭部や肘、膝などのこすれやすい部分に発疹ができる。人によってかゆみが出たり出なかったりする。このほか、皮膚の症状以外に関節の腫れや痛みなどが起こる「関節症性乾癬」、発疹が全身に及ぶ「乾癬性紅皮症」などもある。

乾癬患者では健康な皮膚と比べて10倍以上の速さで皮が生まれ変わり、分厚く皮が積み上がった「鱗屑(りんせつ)」と呼ぶ白い粉ができる。発疹の数が増えると、小さい発疹同士がくっついて大きくなっていくこともある。爪にも症状が出やすいという。

■体表面10%で重度

江藤部長は「患部が赤くなり、フケのようなものが落ちると、患者はどうしても周囲の目を気にしてしまう。身体的にも精神的にも患者の生活の質の低下につながりやすい」と説明する。この病気の症状の重さは基本的に発疹の面積の大きさによる。全身の10%以上に広がると重度とみなされる。片方の手のひらの大きさが体表面の約1%なので、面積を測る指標になる。

赤い発疹が体の表面に多数出てくる=東京逓信病院・江藤隆史氏提供

治療の基本は塗り薬、飲み薬と光線療法だ。塗り薬は炎症を抑える作用を持つ「ステロイド外用薬」と表皮の細胞の増殖を抑える「ビタミンD3外用薬」がある。それぞれ単独で使ったり併用したりする。飲み薬は免疫抑制剤などが使われる。光線療法は炎症などを抑える効果がある紫外線を照射する。飲み薬だけではよくならなかったり発疹の面積が大きくなったりした場合に用いる。

こうした治療が効かず、重症になってしまう患者も約1割いる。その場合には、発症の原因となっている物質を直接抑える「生物学的製剤」を用いる。2010年から使われるようになった。炎症が起きている細胞には「TNF―α」や「インターロイキン(IL)」と呼ぶ炎症性物質が存在する。注射や点滴でこれらの物質の働きを抑える。

30代女性のA子さんは赤い発疹ができたため近くの病院で診てもらったが、確定診断に至らないまま症状が徐々に悪化した。皮膚科の専門医にかかった時には発疹が全身の50%にも及んでいた。光線療法などを試し、いったんよくなったものの、徐々に効果が薄れてしまった。

■製剤は副作用注意

そこで生物学的製剤を注射したところ、本人も驚くほど発疹が消えた。江藤部長は「個人差はあるが、劇的によくなるケースもある」と話す。一度の投与で長期間症状が抑えられる例もあるという。

炎症反応は川が上流から下流に流れるように、体内でいくつかの反応が連鎖して起きる。炎症反応の上流にあるTNF―αを抑える製剤を使うと、感染症にかかりやすくなる。結核やB型肝炎の悪化などに注意する必要がある。

TNF―αの下流にあるILにはいくつか種類があり、乾癬ではIL―23などを標的とした製剤が使われている。14年12月にはスイス製薬大手の日本法人ノバルティスファーマ(東京)の生物学的製剤「コセンティクス」(商品名)が国の製造販売の承認を得た。既存の治療で効果が不十分な尋常性と関節症性の乾癬が対象で、より下流のIL―17に作用する。

ただ、生物学的製剤は効果が高い半面、値段も高い。自治医科大学の大槻マミ太郎教授は「健康保険が適用されるといっても患者が負担を感じる場合もある」と話す。医師とよく相談しながら、治療を進めていくことが重要だ。

治療とあわせて日常生活にも注意したい。脂が多い食事を控えてバランスよく食べたり、なるべくストレスをためないよう工夫したりすることが大切だ。柔らかくゆったりとした服を着て、皮膚がこすれにくくするのもよい。

また、紫外線を含む日光に当たると症状がよくなることが多いが、冬場はその機会が減りがちだ。さらに皮膚が乾燥したり風邪を引いたりして乾癬の症状が悪化しやすいので、気をつけたい。うがいや手洗いを励行しよう。江藤部長は「生活や体調管理に注意しながら治療に取り組むことが重要だ」と話す。

(八木悠介)

[日本経済新聞夕刊2015年2月13日付]

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