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歌舞伎座2月公演 三巨頭、古典の魅力を存分に

2015/2/14 日本経済新聞 夕刊

菊五郎、吉右衛門、幸四郎と三巨頭がそろい、古典の名作が並ぶ歌舞伎座。3人の顔合わせがないのがもったいないが、舞台はお薦め品が並んでいる。開幕劇の「吉例寿曽我」は歌六の工藤、芝雀の虎、又五郎の近江以外は10代・20代の若手ぞろい。珍しい「石段の場」、変わり型「対面」ともいえる「大磯曲輪外の場」と再び正月を迎えるよう。

菊五郎が初役で六助を勤める「毛谷村」が、はまり役の時蔵のお園ともども歌舞伎の田園交響曲ともいえる、のどかな大人のメルヘンのようなこの作の魅力をよく伝える。左団次の斧右衛門も飄々(ひょうひょう)として独自の境地。東蔵のお幸、団蔵の微塵(みじん)弾正も手堅い。

夜の部のみ出演の吉右衛門は「一谷嫩軍記」の「陣門・組打」の熊谷に専念。後段の「熊谷陣屋」の伏線となる動きの少ない、肚(はら)で持ちこたえる至難の役だが、無言のうちに見る者を納得させ、二重の意味を悟らせる卓抜なセリフで圧倒的だ。平敦盛と熊谷の嫡子・小次郎を勤める菊之助はまれに見る適役。祖父・梅幸の名品をしのばせる。芝雀の玉織姫も難役を持ちこたえた実力が評価される。抜てきの平山武者所の吉之助も健闘。

幸四郎が昼夜にわたり大役に取り組む。大曲「関の扉」は8回目とはいえ、円熟度を増した役者ぶりの大きさはかつてとは比較にならない。ここでも大役を担う菊之助は小町姫が適格無比、墨染で非凡な魅力を発揮する。錦之助の宗貞は仁(にん)の良さが物を言う。

黙阿弥の散切物の代表作「筆屋幸兵衛」は明治初期の没落士族の境遇を明確にした補綴(ほてい)が効いて、幸四郎の黙阿弥劇として最も成功している。助演者もそろい世相劇としても面白い。菊五郎らの「神田祭」はよき間奏曲だが、鯰(なまず)の御輿(みこし)は少々考えオチめく。26日まで。

(演劇評論家 上村 以和於)

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