シンディ・ローパー胸にしみた日本への思い

世界的なポップスターのシンディ・ローパーにとって、日本は特別な国になっている。彼女は偶然、東日本大震災の当日に来日した。公演中止が相次ぐ中で日本を離れず、「少しでも勇気と元気を与えられれば」と日本ツアーを決行したことは記憶に新しい。

デビュー30周年記念のステージ=写真 畔柳 ユキ

翌年も宮城県石巻市の小学校を訪問しているし、阪神大震災の翌年にも神戸市の神社の震災復興節分祭に参加している。もともとニューヨークの日本食レストランで働いていたこともある親日家だ。この夜はデビュー30周年の日本ツアー最終日だったが、その関係の深さを改めて実感する親密なステージとなった。

シンディは赤い髪をなびかせ、アリーナ席の後ろから登場した。観客の間を縫うように歩き、ヒット曲「シー・バップ」を元気に歌う。その後も客席まで何度も下り、観客と触れ合った。さらに「ゲンキ?」「チョトマッテクダサイ」「ジャアネ」などと日本語で客席に話しかけ、込み入った話になると、わざわざ通訳の女性を呼んで熱心に語りかけたのも印象的だった。

「タイム・アフター・タイム」「トゥルー・カラーズ」といった彼女の名曲はもちろん、日本語で歌った「忘れないわ」やジョン・レノンの「イマジン」なども、本当に胸にしみた。客席に下り、日本語で語りかけ……の繰り返しが絶妙なアシストとなって情感を増幅させたことは確かだが、それだけではない。

それらが単なるパフォーマンスではなく、彼女が真心から日本を愛し、力づけようとしてくれていることが、哀感のこもった、叫びにも似た歌声から伝わってきたからだろう。聴き手の心に寄り添う歌とは、まさにこれだと感じた。1月20日、日本武道館。

(編集委員 吉田俊宏)

元気いっぱい、体当たりでヒット曲の数々を歌った=写真 畔柳 ユキ
高音の力強いシャウトは健在だ=写真 畔柳 ユキ
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