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やせる女性、膨らむ危険 生まれる子にも影響

2015/2/3 日本経済新聞 朝刊

女性のやせ傾向が止まらない。厚生労働省の最新の調査では、やせている成人女性の割合が12%を超え、過去最高になった。とくに若い人で多く、細身のスタイルが格好よいとの社会的風潮が影響しているようだ。やせすぎは低栄養や骨密度の低下などを招くほか、生まれてくる子どもの健康にも影響が出る恐れがあると専門家は指摘する。

体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割った体格指数(BMI)が「18.5未満」だとやせに分類される。厚労省の2013年の国民健康・栄養調査ではやせている成人女性の年代別割合は20代が21.5%と最も高く、30代が17.6%、40代でも11%だった。男性では30代でBMI25以上の肥満となる割合が25%を超え、40代は34%もいるのと対照的だ。

「若い女性が食事を適量取るのは難しい」。1月上旬、千葉県立保健医療大学の林芙美講師は学生のリポートをみて再認識した。昨年10月に主食・主菜・副菜を弁当箱にきっちり詰めて適量を把握するための実習を、女子学生約25人に実施した。

■深刻な低栄養

容量600ミリリットルの弁当箱の場合、主食のご飯を3、主菜の魚や肉を1、副菜の野菜やイモ類を2の割合で詰めるよう指導した。こうするとエネルギー量が600キロカロリー前後になり面倒な計算などをしなくても適量で栄養バランスのとれた食事になるという。

実習で指導した弁当(写真上)。ご飯もおかずも隙間なく詰めるのがポイントだが、3カ月後(同下)には量も少なめに=林芙美・千葉県立保健医療大学講師提供

学んだ成果を確認するため、学生自身が詰めた弁当箱の写真を撮影してリポートとして提出させた。しかし、多くの弁当箱がスカスカで、ご飯も、おかずの量も抑え気味だった。林講師は「弁当箱いっぱいに詰めることに抵抗があるようだ。栄養面で必要量に達していない」と嘆く。

リポートには「太りそうだから実践したくない」などの感想も添えてあった。一方で、多くの学生が普段から間食として菓子などを口にしている。指導した弁当を食べた日は「おなかがいっぱいで間食をしなかった」学生もいた。

女性のやせ願望が強い背景にあるのが、ダイエット情報の氾濫や、自分が太っていると判断する例が増えていることだ。林講師が岐阜大学の山本真由美教授らと共同で高校生や大学生に調査した結果、実際の平均は51~55キログラムだが外見的に最適と考える体重は約47キログラムと開きがあった。

しかし、やせすぎは医学的に問題も多い。日常的なだるさや体力低下などを招くとともに、栄養不足の懸念も増す。その一つが、無理なダイエットなどで若くても更年期に似た状態になる点だ。極端にやせている女性では骨密度が低下しているという調査結果もある。女性は更年期以降、骨粗しょう症のリスクが高まるが、やせすぎだと若くしてそうした状態になりかねない。

医師である柴田博・人間総合科学大学教授は「肉を食べない高齢者は低栄養になりやすいと警告してきたが、今は若い女性の低栄養が深刻だ」と話す。骨密度を維持するためには、さまざまな食品をバランスよく食べて、栄養分の不足をなくすことが重要だ。

■増える低体重児

妊娠した際も影響が出る。生まれたときの体重が2500グラム未満の小さい赤ちゃんの増加だ。国内の低出生体重児の割合は1970年代半ばから上昇し、13年は9.6%と約10人に1人に達している。

産婦人科医で妊婦の栄養に詳しい福岡秀興・早稲田大学教授は「やせた状態で妊娠し、低栄養が続くと、低出生体重児の生まれるリスクが増える」と警告する。妊娠糖尿病などを防ぐ栄養指導に力を入れてきた経緯があるが、「低出生体重児の割合は、食料不足で栄養状態の悪かった第2次世界大戦直後より3割も多い」(福岡教授)という。

厚労省は妊婦のエネルギー摂取量について、妊娠初期から末期にかけて通常時より50~450キロカロリー増やすよう推奨している。だが実際の妊婦の摂取エネルギー量は07~11年の平均で1日1787キロカロリー。身体活動のレベルが普通の女性に必要な推定エネルギー量は18~29歳が1950キロカロリー、30~49歳が2000キロカロリーで、これらの値にも及ばない。

やせすぎによる出生体重の低下によって、赤ちゃんが将来の生活習慣病などを発症する恐れが高まることが国際的な大規模疫学調査でわかってきた。母親の低栄養状態が胎児や生後間もない赤ちゃんの遺伝子の働きを調整する仕組みに影響を及ぼし、将来の病気の素因を作る可能性が指摘されている。林講師は「長い目でみた健康維持のため、毎日の食事に注意してほしい」と助言する。

(西村絵)

〈ひとくちガイド〉
《本》
◆弁当箱を活用した食事管理法を紹介
「3・1・2弁当箱ダイエット法」(足立己幸・針谷順子著、群羊社)
《インターネット》
◆国民健康・栄養調査の結果を知るには
厚生労働省のサイト(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html)

[日本経済新聞朝刊2015年2月1日付]

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