介護が必要な人、増えてるの?

イチ子お姉さん 日常生活で手助けが必要なお年寄りが増えているって知ってた? そんな人たちを社会全体で支える制度があるんだけど、今年改正されるのよ。
からすけ 近所でよく見かけるおじいさんやおばあさんは、元気そうな人が多いけどなあ。手助けが必要な人が、どうして増えているんだろう?

14年間で2.7倍、586万人に

イチ子 日本人の平均寿命(じゅみょう)は延びており、2013年に女性は86.61歳(さい)と2年連続で世界一、男性も80.21歳と初めて80歳を超えたの。年齢(ねんれい)を重ねても元気なお年寄りはもちろん多いけれど、体の機能が徐々に低下して、日常生活でだれかの手伝いが必要な人も増えているの。

からすけ 年を取ると、みんながみんな元気というわけにはいかないよね。じゃあ手助けが必要なお年寄りって、いったいどれぐらいいるのかな?

イチ子 日常生活の一部で見守りや手助けが必要という軽度の人から、最も症状(しょうじょう)が重い人まで合わせると、14年4月末時点で586万人。2000年4月と比べて約2.7倍に増えているのよ。

からすけ そんなに! 日本の人口って、減ってるんだよね。どうして介護(かいご)が必要な人がどんどん増えているの?

イチ子 まず、介護が必要な人の割合は、年齢が進むのにつれて高くなるのは分かる? 75歳を超えると3割を超え、85歳以上は2人に1人は介護が必要という計算になるの。医療技術(いりょうぎじゅつ)の向上でがんや心臓病(しんぞうびょう)、脳卒中(のうそっちゅう)といった重い病気にかかっても亡くなる人の数は減って平均寿命が延びたんだけど…

膨らむ費用 制度見直し

からすけ 命は助かっても介護が必要になる人が増えてしまったの?

イチ子 そうね。こうした状況のなかで、日本では急激な高齢化が進んだの。人口に占める75歳以上の人の比率は、2000年には7.2%だったんだけど、14年には12.6%になったようね。30年には20%近くになる見通しだから、介護が必要な人は今後ますます増えそうね。

からすけ 大変だな。ところで介護保険制度(キーワード)って聞いたことあるけど、どんな制度だっけ?

イチ子 施設(しせつ)に通って入浴や体操をするデイサービスや、短期間施設に入るショートステイなど多くのメニューがあって、その中から自分に合った計画を立てるのよ。介護が必要な人が7段階に分かれた要介護度(キーワード)という体の状態に応じて、自宅や施設でどの程度お世話をしてもらうか決めるの。

<キーワード>
介護保険制度 2000年にスタート。40歳以上の人たちで保険料を出し合って、介護が必要な人を支える社会保険の一つ。
要介護度 介護が必要と申請した人を調査し、日常生活での介護の必要度合いに応じて要支援1~2、要介護1~5に認定する。

からすけ おじいちゃんが、歩くのが難しくなってきたから一度相談しようと言ってたよ。それから隣(となり)の家のおばあさんを送迎するワゴン車を見かけたことがあるけど、デイサービスの車だったのかな。サービスは全部無料で利用できるの?

イチ子 要介護度に応じて毎月利用できる金額が決まっていて、これまではその額の範囲内(はんいない)なら自分で払うのはだれでも1割。上限を超えた部分は全額自己負担だったの。

からすけ 1割だけでいいんだ。おじいちゃんよかったね。

イチ子 ところが、そうも言ってられないの。さっきの話のように介護が必要な人が増えた結果、介護保険のサービスの費用が膨(ふく)らんでいるのよ。当初は3.2兆円だったけど、年々増えて10兆円の大台に達しそうなの。お父さんやお母さんたちが納める保険料も増えているけど、費用を抑(おさ)える仕組みも求められているわ。介護が必要な人は今後さらに増えて、10年後には費用は21兆円程度に膨らむという予想もあるわ。

からすけ それで制度を変えるってことか。

イチ子 15年度の改正で、年金の収入が年間280万円以上ある人は8月から2割に引き上げられることになったわ。ほかにも、収入が少ない人に施設で提供していた食事代などの補助の見直しや、必要な介護の度合いが軽い人へのサービスの一部を4月から段階的に国から市町村に移すといった改革が打ち出されたのよ。

からすけ 収入が多いとはいえ、いきなり払う金額が2倍になったら大変だろうね。

イチ子 ところが、これだけでは費用の拡大に歯止めがかからないという見方もあるの。お金の面だけでなく、介護現場の人手不足や、家族の手助けをするために勤め先を辞める「介護離職(りしょく)」の増加など、問題はたくさんあるわ。今後も進んでいく高齢化に向き合うには、こうした問題を一つ一つ解決していくしかないわね。

「うば捨て山伝説」に見る教訓

豊島岡女子学園中学高等学校の神谷正昌先生の話
高齢社会において、高齢者とどのように向き合っていくかは今後の大きな課題になります。かつて文字が無く、口伝えで知識が継承(けいしょう)されていた村落共同体においては、古老は昔語りをし、その経験によって尊重される存在でした。ところが世界各地には、年老いて働けなくなった親を山奥に捨てるという、うば捨て山伝説が昔話として伝えられています。親を捨てて見殺しにするとはとても残酷(ざんこく)な話ですが、本当に行われていたのかは定かではありません。
殿様(とのさま)が老親を捨てるお触れを出したのに対し、捨てるに忍びず床下に隠したところ、隣国が攻めてきて突きつけた難題を老親の知恵で解決し、殿様が改心してお触れを撤回(てっかい)した。日本で伝わった話の内容を見ると、伝説は決して残酷な話ではなく、むしろ両親を大切にすることを説いた教訓だったようです。
今週のニュースなテストの答え 問1=ギリシャ、問2=東京五輪・パラリンピック

[日経プラスワン2015年1月31日付]

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