働き方・学び方

イチからわかる

世界中でやせた土地が増えているって本当?

2015/1/27 日本経済新聞 プラスワン

イチ子お姉さん 土がやせて植物や農作物が育たない土地が世界中で増えているそうよ。国連は今年2015年を土の大切さを訴(うった)える年にしたわ。
からすけ 地球温暖化の問題はよく聞くけど、土がやせているというのはあまり聞かないな。どうして世界中でやせた土地が増えているんだろう。

■3分の1が劣化、農業に打撃

イチ子 工業化のために新興国(しんこうこく)などでは森林伐採(しんりんばっさい)で開発を進めていることは学習したことがあるでしょう。山や森林があれば、強い風や雨が降っても土は守られていたんだけど、山が切り開かれて直接、風雨に土の表面がさらされると、土が吹き飛ばされたり流出したりしてしまうの。

からすけ それがどうして問題なの?

イチ子 実は植物や農作物がよく育つ、養分のある土は表層から深さ20センチメートルぐらいまでしかない。だから、その部分が失われてしまうと、養分の乏(とぼ)しいやせた土地になってしまうの。

からすけ 前にシャベルを使って空き地で穴を掘(ほ)ったことがあるよ。途中(とちゅう)から土が硬(かた)くなって掘りにくかったな。

イチ子 そうでしょ。土が硬くなると多くの植物は根が進んでいかないの。

からすけ やせた土地が増えているというけど、どのくらいになるのかな。

イチ子 土の養分が乏しくなり、回復が困難になることを劣化(れっか)というんだけど、国連食糧農業機関(こくれんしょくりょうのうぎょうきかん)(FAO)が11年に発表した報告書によると、世界の土地の約3分の1が劣化傾向にあるとされているわ。こうした土壌(どじょう)の劣化は深刻な問題だと指摘していて、今年を国際土壌年(キーワード)にして土の大切さを訴えようとしているの。

からすけ どんなところで土壌が劣化しているの?

イチ子 アメリカ西海岸や地中海地方、「サヘル」といわれるアフリカのサハラ砂漠(さばく)の周縁部(しゅうえんぶ)ね。アジアも中国やインド西部など広い範囲(はんい)で劣化しているとされているわ。日本は森林に覆(おお)われた地域が多く、世界的にみて恵(めぐ)まれた土壌と言われているわ。

からすけ 劣化というけど、どんな基準があるの。

イチ子 農業環境技術研究所の大倉利明(おおくらとしあき)さんによると、農地で年間に「1ヘクタールあたり10トン以上100トン未満」の土が流れ出ると劣化が「中度」、「同100トン以上」なら「強度」という基準があるそうよ。1ヘクタールの土地だと10トンの土は深さ1ミリぐらいだって。

からすけ 100トンだと1センチぐらいか。その程度の流出でも深刻なんだね。

イチ子 それだけの土を作るのには、とても長い年月がかかるの。土は岩石が風化して、植物や動物の死骸(しがい)などが腐植(ふしょく)して、さらにミミズや微生物の働きが加わってできる。同研究所の八木(やぎ)一行(かずゆき)さんによると、1センチの肥沃(ひよく)な土を作るには100年から数百年かかるといわれるそうよ。

<キーワード>
国際土壌年 土壌を大切にすることが経済成長や貧困の撲滅などに重要だとして2013年の国連総会で決議された。
不耕起農法 農地を耕さない栽培方法。前に栽培した作物の残りが地表を覆い、風雨による土壌流出を和らげる。

■山林開拓進み、風雨で流出

からすけ 土って貴重なんだね。対策はないの。

イチ子 国際協力機構(JICA)が中心となって、アフリカのセネガルで土壌劣化を抑(おさ)える技術協力プロジェクトを進めているわ。植林や落花生(らっかせい)の殻(から)をまくことで草地を回復させ、一部は畑地になる成果も出ているの。落花生の殻は植物の葉や茎(くき)を大きくする窒素分(ちっそぶん)を含むほか、通気性をよくするので土壌改良材として適しているそうよ。

からすけ いまある農地を守るにはどうしたらいいんだろう?

イチ子 農地は作物を収穫した後に裸(はだか)の土地になってしまうので、表面の肥沃な土が流出しないように、ビニールや稲わらなどで覆ってあげるといいそうよ。それから欧米でよく見られる不耕起(ふこうき)農法(のうほう)(キーワード)。作物を植える時に土地を耕さない農法を続けると、土地の表面が残った葉などに覆われて、土中に養分が蓄(たくわ)えられるようになる。ただ、日本は雨が多いから、雑草が生えてなかなか難しいけれど。

からすけ 米航空宇宙局(NASA)が近く、地球の土壌の表層5センチの水分量を観測する衛星を打ち上げるという話も聞いたよ。

イチ子 「SMAP」と呼ばれる衛星ね。水分情報が得られれば干ばつの警戒(けいかい)などに役立ちそうね。いずれにしても50年までに90億人に達するとみられる世界人口を養うには、豊かな土壌を取り戻すためにいろいろな対策が必要だわ。

■五行では万物つくる元素

灘中学校・高等学校の藪本勝治先生の話
土は古来、万物(ばんぶつ)を構成する元素として重要視されてきました。古代中国では、森羅万象(しんらばんしょう)は木・火・土・金・水の5つからなるとする「五行説(ごぎょうせつ)」が生まれ、朝鮮(ちょうせん)半島や日本で浸透(しんとう)しました。五行説では土は万物を育成・保護する性質がある特別な元素です。
たとえば東西南北にはそれぞれ木金火水があてられますが、「土」はそれらをつなぐ「中」とされます。また春夏秋冬は木火金水ですが、「土」はそれらの移行期間である「土用(どよう)」です。ちなみに1週間をあらわす「七曜(しちよう)」は五行に日月を加えたものですが、土曜日は平日と休日の中間という感じがしてうきうきしますね。土に親しむ機会が少ない昨今(さっこん)では、感覚的に「土」の大切さが忘れられつつあります。土日は自然の中で遊び、土に親しむのもよいのではないでしょうか。
今週のニュースなテストの答え 問1=イスラエル、問2=ベア(ベースアップ)

[日経プラスワン2015年1月24日付]

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