Bunkamura「プルートゥ PLUTO」挑戦が光る 斬新な演出

未完の印象はぬぐえない。けれども刺激的舞台だ。宙を舞う鉄腕アトムのはかなさ。漫画を立体化するシェルカウイ演出の斬新さ。まあ、たいした挑戦である。

手塚治虫の「鉄腕アトム」に出てくる「地上最大のロボット」をもとに書かれた浦沢直樹の漫画「PLUTO」の舞台化。大の手塚ファンにして今をときめくベルギーの振付家は演出のアイデアをこれでもかと繰り出す。「テヅカ TeZukA」に続くアトムへのオマージュだろう。

コマ割りのコマが箱になって動き、ドラマが展開する。漫画そのものが舞台を覆う。ダンサーたちがロボットの動きを身体で表し、アトムを持ちあげ、戦わせる。大爆発をビニール状の膜の伸縮と光で示す。およそ3時間、才気はじける演出に目を奪われる。奇怪なロボットも迫力満点。

とはいえ、筋を追える観客がどれほどいたか。最高レベルのロボットたちが襲われる事件が起こる。大量破壊兵器の存在を理由に子供まで虐殺する超大国への憎しみが浮き上がる。ロボットの闘いはギリシャ悲劇の色を帯び、憎悪の連鎖をめぐる哲学さえにじむ。が、この物語の深遠な魅力は焦点をしぼらない限り舞台では生きないだろう。

それでも憎しみの連鎖を断とうと空を飛ぶアトムの健気(けなげ)な闘いは圧巻。敵に立ち向かい、ぐったりする。諦めず飛び上がる。心がないはずのロボットの動作はもはや祈りだ。人間が演じるロボットの妙味。ダンサー森山未来の青白い肉体はしなやか、なんて心揺さぶるアトムだろう。

外国人スタッフとの国際的制作。柄本明の話術、吉見一豊の奇怪さ、松重豊の語気、永作博美の哀感。好演に手塚治虫への敬意をみる。谷賢一台本。2月1日まで、シアターコクーン。2月6日~11日まで、大阪・森ノ宮ピロティホール。

(編集委員 内田洋一)