べんけい飛脚 山本一力著戯作者の苦悶と成長の物語

2014/12/11
(新潮社・1800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

今回は今年の読書納めにふさわしい一巻といえよう。

 物語は2部構成で、第1部は、松平定信との仲が剣呑(けんのん)になりかかっている加賀藩の意を酌んだ道具屋が、江戸と金沢とを結ぶ飛脚御用を請け負っている浅田屋に、秘巻『享保便覧』を見せるところからはじまる。

 それは、享保2年、大規模な鉄砲隊を伴って江戸から帰国した加賀藩が何故(なぜ)何のお咎(とが)めもなくすんだかを記したもの。浅田屋の主伊兵衛はこの記録を定信に見せる極上の読物に仕立て、加賀藩が公儀に何の二心も抱いてないことを証明しようと思い立つ。

 そこで、伊兵衛が白羽の矢を立てたのは、うだつの上らぬ戯作者雪之丞。彼は、この仕事の取材をしていく中で、様々な仕事に従事する男たちの矜持(きょうじ)を知り、成長し、苦悶(くもん)の中から立ち上がる。

 ここまででも充分、感動的な物語なのだが、第2部はその雪之丞が書いた、74年前、いかにして浅田屋の男たちが、老中と一触即発の加賀藩を救ったか、という物語が記される。そして題名の“弁慶”の意味を知った時には涙が流れてとまらない。除夜の鐘を聞き乍(なが)らぜひ――。

★★★★★

(文芸評論家 縄田一男)

[日本経済新聞夕刊2014年12月10日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

べんけい飛脚

著者:山本 一力
出版:新潮社
価格:1,944円(税込み)

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