国産旅客機 開発メリットは 

三重県には既にMRJの素材加工に携わる企業がある。ウォータージェットという高速の水圧による素材加工で米ボーイングからも仕事を受注している三重樹脂(鈴鹿市)だ。社長の打田昌昭さん(69)に会うと「航空機産業では国際品質規格(JISQ9100)の認証を取得しても、製品の納入前の厳格な検査態勢など乗り越えるべきハードルは高いです」と指摘した。

調査を進めると、航空機産業の技術は他産業に大きな影響を与えることも分かった。三菱総合研究所チーフコンサルタントの奥田章順さん(56)は70~98年のデータを基に推計。設備や加工の受発注で他産業に与える効果は1.1倍にとどまるが、航空機産業の技術が他産業に使われ生産を誘発する技術波及効果は9倍、合計で10倍だ。「最近では炭素繊維材料も技術波及の代表例です。完成機を造る企業が国内でクラスターをつくれば、さらなる新技術が生まれやすくなります」と力説した。

事務所で報告を終えた章司が「探偵業にも新技術が生まれるといいんですが」と付け加えると所長が一言。「いつの時代も足で稼ぐのが基本」

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国際プロジェクトで主導権狙う

日本航空機開発協会によると、世界の航空旅客需要は2013年から33年までの20年間で2.6倍に増え、運航機数は1万9千機から3万6千機と1.9倍に増加する見通しだ。

アジアの新興国を中心にビジネスと観光の両面で需要が増えることが主な要因。世界の航空機産業は現在の年間25兆円規模から20年後には年間50兆円規模に倍増するとみられている。

航空機産業の日本企業のシェアは現状で4~5%程度。政府はこれを自動車産業並みの20%台に引き上げる考え。それには国内市場を10倍前後に拡大させる必要がある。

MRJ後の次世代航空機について、政府は15年度から研究開発に着手する方向だ。事故を25%低減するほか、騒音を90%削減、燃費も半減できる機体をめざす。40年をめどに実用化する考えだ。開発企業は設計から部品製造、組み立て、保守管理までを束ねて利益を拡大するだけでなく、高付加価値の機体開発の実績により様々な機体の国際共同開発で主導権を握る。

同協会の一丸清貴専務理事(62)は「トップ企業自らが完成機メーカーとして確立し、他の企業をけん引しないと裾野は広がらない」と話す。完成機メーカーには生産性の高いサプライチェーンの構築も求められるが、そのための関係企業への技術支援も課題となる。

(経済解説部 福士譲)

[日本経済新聞朝刊2014年12月9日付]