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エコノ探偵団

国産旅客機 開発メリットは 

2014/12/10 日本経済新聞 朝刊

「国産旅客機の開発が進んでいると報道で見ましたが、日本経済にはメリットがあるのでしょうか」。近所の大学生の疑問に探偵の松田章司が「利用者には影響がありそうですが、経済への影響も気になりますね」と調査を始めた。

■一貫生産築けば収益高く

国産旅客機の開発は三菱重工業グループが進めている。近距離輸送を担う座席数100席以下のリージョナルジェット機で、国産初のジェット旅客機。同社グループが開発する「MRJ」(三菱リージョナルジェット)は70~90席クラスで、計画では2015年4~6月に初飛行、17年4~6月に納入を開始する。

章司はまず三菱重工業を訪ねた。MRJ推進室長の石川彰彦さん(58)は「日本の旅客機開発は、1962年に初飛行したプロペラ機『YS―11』以来です。この間、当社は欧米の航空機メーカー向けの部品製造や防衛部門の機体開発で技術を蓄積してきました」と指摘。「完成機事業は設計から構造部材や装備品、組み立て、顧客サポートまでをまとめ上げ、高い付加価値が見込めます」と話した。

開発主体である子会社の三菱航空機(名古屋市)にも話を聞いた。経営企画部長の岩佐一志さん(55)に会うと「MRJは燃費効率が他の同型機より20%優れ、騒音の影響が及ぶ面積も40%小さい。リージョナルジェット機は今後20年で5360機(61~100席)の新規需要を見込んでおり、当社はシェア5割を目指しています」と説明した。

航空会社の話も聞こうと章司はANAホールディングスに向かった。同社はMRJの導入を早々に表明。機材計画チームリーダーの吉田秀和さん(46)は「地方路線では90~100席のリージョナルジェット機が採算に合います。国内線での使用比率は現在の約15%から5年後に20~30%になりそうです」と教えた。

「そういえば航空機市場は参入障壁が高いと聞いた」。章司は産業組織論が専門の東京大学教授の大橋弘さん(44)に意見を求めた。

大橋さんは「航空機市場は先発者利益が顕著です。機体製造には関係国の当局から安全基準などの認証を得る必要があり、ノウハウを蓄積した先発者のほうが認証を得やすい事情があります」と指摘。「既存企業の機体で訓練を受けたパイロットが、新規企業の機体で訓練を受ける際、設計の違いが大きいために生じる『スイッチングコスト』も先発者に有利に働きます」

ただ「最近は1回の輸送量より輸送回数が重視されています。待ち時間が省けるなど経済効率が上がるためです。これを『時間価値の増大』と言いますが、小型機による多頻度輸送はその対応策です。既存企業も機体の小型化を進めていますが需要を賄えず、参入余地は大きいでしょう」。

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