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インターステラー 時空を超える父娘の絆

2014/11/29 日本経済新聞 夕刊

「ダークナイト」のクリストファー・ノーラン監督は、デジタル時代に抗(あらが)うフィルム至上主義者だ。バットマンもSFもフィルムで撮り、CGも多用しない。遠大な宇宙の旅を描く新作もフィルムで撮影。一部劇場はフィルムで上映する。

砂塵(さじん)が舞う農場。砂嵐と疫病で作物が枯れ、人類は滅亡の危機にある。食糧増産のため元宇宙飛行士のクーパー(マシュー・マコノヒー)もコーン畑を耕している。科学技術は不要とされ、教科書から月着陸の記述は消えた。それでも娘マーフは宇宙に興味を抱く。

書棚のある部屋に積もる砂のサインに導かれ、父娘がたどりついたのは解体されたはずの米航空宇宙局。秘密裏に銀河系外の惑星への人類移住計画を進めていたのだ。クーパーはブランド教授(マイケル・ケイン)に乞われ、教授の娘アメリア(アン・ハサウェイ)らと共に宇宙へ飛ぶ。愛する娘の制止を振り切って。

ブラックホール近くでは時間が遅くなる。数十分の間に、地球では数年が過ぎる。人類を救う時間はあるのか。父が未知の惑星で数時間だけ苦闘する間に、大人になった娘(ジェシカ・チャステイン)はブランド教授の助手を務めていた。

人類救出の鍵を握る方程式を娘が解くには、ブラックホールの量子データが必要だ。父は決意する。

壮大な宇宙論だが、焦点は人間の内面にある。人類を守るか、自分や家族を守るか。クーパーもアメリアも他の科学者も心の闇を抱え、葛藤する。ノーランが一貫して追い続ける闇だ。

娘を守り、人類を守ろうとするクーパーの旅が物語の軸となる。時空を超えた父娘の絆。それが、切れるのか、つながるのか。

見渡す限りのコーン畑もCGでなく、実際に牧場に種をまいて育てたという。黒澤明もびっくりのアナログぶりだが、その生々しい手触りが人間ドラマを支える。2時間49分。

★★★

(編集委員 古賀重樹)

[日本経済新聞夕刊2014年11月28日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…

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