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エコノ探偵団

空き家増加 自治体どう対応

2014/11/26 日本経済新聞 朝刊

「隣が空き家になって困っているの。行政が取り壊してくれないかしら」。買い物帰りに事務所を訪れた近所の主婦がため息をついた。「持ち主がいますよね。自治体が処分できるのかな」と、探偵・松田章司は疑問を感じ、調査に出かけた。

■管理や解体促す条例続々

まず富士通総研上席主任研究員の米山秀隆さん(51)を訪ねた。「空き屋対策に取り組む自治体が増えています」。今年4月時点で全国350以上の自治体が空き家の管理を促す条例を施行。米山氏は「さらに300近くが条例化を検討中です」。背景は空き家の増加だ。総務省の「住宅・土地統計調査」では2013年、空き家は約820万戸で、5年前より63万戸増え全住宅の13.5%だった。

さらに知りたくなり、章司は野村総合研究所に向かった。インフラ産業コンサルティング部グループマネージャーの榊原渉さん(41)は「人口と世帯数が将来減る一方で住宅の取り壊しが進まなければ、空き家率は23年に21%に上昇しそうです」と予測する。

ただ、統計上の空き家には、別荘や賃貸・売却待ちの物件も含む。「買い替えや住み替えに一定の空き家は必要。問題は、誰も管理せず放置された“単なる空き家”です」と、榊原氏。別荘でも賃貸・売却用でもない単なる空き家は13年、318万戸だった。全住宅の5.3%だが、榊原氏は「23年には8%に増える恐れがあります」とみる。

章司が野村総研を出ると、さっき別れた米山さんが通りかかった。「単なる空き家は、なぜ問題ですか」と尋ねると、米山氏は「外部不経済を発生させるからです」と答えた。「外部不経済って?」と章司が聞くと、「端的に言えば周囲に迷惑ということです」と米山氏。崩れれば周囲に危険が及ぶ。放火や侵入の恐れもあり、雑草や害虫もはびこりやすい。「だから自治体が対策に乗り出すのです」

章司が「住みたい人が多い地域でも単なる空き家があるのかな」とつぶやくと「はい。深刻です」と、埼玉県川口市技監の粟津貴史さん(38)が話しかけてきた。同市は転入者が多く、全住宅の中で単なる空き家は2%程度だが、空き家条例を昨秋、施行した。「単なる空き家の4割が壊れていたり。持ち主が所在不明の家もあります」

粟津さんは「別の市で外部不経済を分析すると空き家の周囲の地価が数%ほど下がったと推計できました」と話す。ただ、条例で持ち主に管理や取り壊しを助言・指導・勧告する自治体は多いが、市が強制的に取り壊す代執行を定めるのは5割強。実際、川口市は代執行を盛り込まなかった。個人から訴えられる恐れがあるからだという。

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