高齢者に多い肺炎 定期予防接種、原則65歳以上に助成

■熱が出にくい

翌日転院し、肺炎球菌による重症の肺炎と診断された。抗生物質などを使って治療し、肺炎は治ったが入院は約1カ月に及んだ。すっかり肺の働きが落ち、在宅で酸素を吸入することになった。

高齢者に肺炎球菌ワクチン接種の説明をする(日本医科大学呼吸ケアクリニック、東京都千代田区)

東京医科大学の瀬戸口靖弘教授によると、若い人が肺炎になった場合は、風邪のときより高い熱や粘り気のあるたんが出る。感染初期に発熱があるのは体内で病原体とたたかう免疫の作用によるものだ。一方、免疫の力が低下した高齢者では熱が出にくい。「喫煙などが原因となる慢性閉塞性肺疾患(COPD)などを持つ人も多く、息を一気に出す力が弱いためたんも出せないことが多い」(瀬戸口教授)

肺炎球菌が原因で肺炎になると、抗生物質で菌を排除できても肺の機能が戻りにくい。木田所長は「高齢者は肺の構造が変わり、働きが低下してしまう」と指摘する。このため専門家はワクチンを活用した予防が大切だと強調する。ワクチンは以前からあったが、今年10月から高齢者向けが公費助成を受けられる定期接種になった。国は接種を推奨している。

2018年度までは65歳以上が5歳刻みで助成対象となっている。60~64歳も一部の病気を持つ人は対象だ。自己負担額は住んでいる自治体により異なるので、市役所などに問い合わせてみるのもよいだろう。

肺炎球菌は人から人につばなどで飛沫感染するが、遺伝子のタイプの変化は少ない。この点は毎年流行する型が変化するインフルエンザウイルスとは異なる。

肺炎球菌は現在、90種類以上が見つかっている。10月からの定期接種のワクチンは23種類に対応したタイプだ。ワクチンにはもともと子ども向けだったタイプもあり、こちらは13種類に対応する。この2タイプは一部の球菌の種類は重なっているが、「米国ではどちらも高齢者に対して打っている。どうしても心配な人は自費で打っても問題はない」と岡部所長は話す。

定期接種化は今年からだが長年利用されており、副作用は少ないとされる。ただワクチン接種でショック状態などになる場合も想定し、打った後の30分は病院内にいるようにしよう。

肺炎予防に役立つワクチンだが、万能ではない。睡眠や栄養をしっかり取り、体力や抵抗力をつけておくことが重要だ。インフルエンザに感染して肺炎になる恐れもあるので、「1週間ほど空けてインフルエンザのワクチンも打っておくとよい」と専門家は口をそろえる。

[日本経済新聞夕刊2014年11月21日付]

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