囲碁・将棋、スマホで対戦 アプリで公認免状も
株式会社HEROZが運営する「将棋ウォーズ」はアプリで対局方法を選ぶと、自動で対戦相手を探してくれる。対局方法は持ち時間3分、10分と1手あたり10秒の3段階で選べる。決着がつくまでの時間が短く、空き時間で手軽に対局できるのが魅力の1つだ。将棋ウォーズ全体の1日あたりの対局数は20万を超えており、自分のレベルと近い人と短い待ち時間で対局できる。
アプリは連盟公認
HEROZの林隆弘代表取締役は「将棋に対する固定観念を壊したかった。とにかく畳が似合う雰囲気にするのが嫌だった」と笑う。意識したのは格闘技。今までの将棋のイメージを覆す、華やかな演出と効果音はまさに格闘技さながらだ。
将棋ウォーズは2012年2月のリリースと同時に日本将棋連盟の公認アプリになった。「将棋を普及させたいという思いで将棋連盟と一致した」とHEROZの林氏は語る。日本将棋連盟も「現代にピッタリのアプリで、大変心強い味方」(日本将棋連盟モバイル編集長の遠山雄亮五段)とその力を認めている。
日本将棋連盟と将棋ウォーズは関わりを深めている。今年2月からは将棋ウォーズで認定された段・級位で、そのまま日本将棋連盟公認の免状や認定状を獲得できるようになった(有料)。級位の認定状なら3000円ほどで認定状が得られる。
日本将棋連盟傘下のインターネット将棋サイト「将棋倶楽部24」でも同様の免状交付が受けられるが、日本将棋連盟普及免状部の浅見章安部長は「将棋ウォーズを経由した若い人の申請が増えた。特に安価な級の認定状申請が例年の倍近くまで増えている」と、その効果に驚く。
将棋界はインターネットの取り込みに力を入れている。「インターネットと将棋に想像以上の相乗効果があった」(電子メディア部の杉浦伸洋部長待遇)。インターネットを通じた動画配信だけにとどまらず、プロ棋士とコンピューターの対局など幅広い分野でIT(情報技術)の導入を進めている。
将棋ウォーズには将棋界のIT導入を象徴するもう1つのサービスがある。現役のプロ棋士に勝利したソフト「ponanza(ポナンザ)」が手助けしてくれる「棋神降臨」という機能がそれだ。HEROZの林氏は「人が手詰まりに陥ったときにコンピューターが手助けしてくれる。良い手を覚えるきっかけになり、新しいeラーニング(インターネットを利用した遠隔教育)の形だと思っている」と胸を張る。
ITで普及一段と
将棋ウォーズにはコレクションの要素もある。自分が使った戦法や囲い(守備陣形)などがコレクションとして記録されていく。記録する戦法だけでも100通りを越え、集める過程で将棋を学ぶことができる。
囲碁界でもインターネットの取り込みを始めている。日本棋院が運営するウェブサイト「幽玄の間」では、同サイトでの段・級位に応じた免状をもらうことができる。幽玄の間は将棋ウォーズや将棋倶楽部24と同様にアプリ版もあり、手軽に楽しめるのが特徴だ。
将棋・囲碁ともに初心者向けのアプリなども充実しており、ITを活用した普及活動は一段と進んでいる。
インターネットやスマホの普及を受け、伝統的な室内ゲームが室内にとどまらない広がりを見せている。「就職活動に向けた資格の1つとして、将棋の免状や認定状を取ろうという動きも学生の間にある」(HEROZの林氏)。隙間時間を生かし、インターネットでアマの段・級位の獲得に挑戦してみてはいかがだろうか。
(経済部 佐伯遼)
[日本経済新聞夕刊2014年11月20日付]
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