君は山口高志を見たか 鎮勝也著剛速球の逸話、丁寧に検証

2014/11/21
(講談社・1500円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

たくさんの人物が登場する。細かな試合描写と数字も記され、さまざまな逸話は紹介される。それらのすべては、ただただ「おそろしく速い球」という一点に結ばれる。

 伝説が伝説として保たれた時代、関西大学にひとりの剛速球投手が出現した。身長は170cmに満たぬのに白球は下から上へ勢いを増した。

 山口高志。社会人を経て阪急ブレーブス入団、1975年からの日本シリーズ3連覇などに力を尽くし、実質4年だけの盛りを投げ抜いた。

 どこかで耳に目にしているのに深くは知られぬ対象を書き伝える。筆者は、元在阪スポーツ紙の野球担当らしく有名無名の者たちに旺盛な取材を仕掛け、その務めを果たした。伝説に敬意を寄せつつ事実を確かめ、感情移入を抑制した分、長く残る評伝となった。

 山口高志と対戦した後の打席に「焦げた匂い」が残ったのは本当。高校で球を受けた捕手の指がいまでも寒くなると痛むのもその通り。真上からの振り下ろしの威力ゆえ自分の指がマウンドの土にめりこみ負傷したのは事実と違った。

 あの短命の剛腕が繊細なコーチとして息長く働く。これも人生の妙だ。

★★★★

(スポーツライター 藤島大)

[日本経済新聞夕刊2014年11月19日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

君は山口高志を見たか 伝説の剛速球投手

著者:鎮 勝也
出版:講談社
価格:1,620円(税込み)

今こそ始める学び特集
今こそ始める学び特集