ライフコラム

エコノ探偵団

増税すると景気どうなる 駆け込み・反動は日本特有

2014/11/12 日本経済新聞 朝刊

「来年10月に再び消費税の増税が予定されているそうですが、景気にはどう影響するのでしょうか」。近所の主婦の疑問に、探偵の松田章司が「重要な問題ですね。調べてみましょう」と調査に乗り出した。

章司はまず、東京都江戸川区の総合スーパーを訪ねた。衣料品売り場で買い物していた30歳代の女性に話を聞くと「4月の増税で負担が増えたことはひしひしと感じます。増税前に買いだめしたこともあって、消費を減らしていることは確かです」と答えた。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員の片岡剛士さん(41)に話を聞いた。「消費増税は『増税前の駆け込み需要の反動減』と『実質所得の減少』という2つの要因によって消費を落ち込ませます」。4~6月期の国内総生産(GDP)は物価変動の影響を除いた実質で前期比年率7.1%減。これは前回増税時の97年4~6月期(同3.5%減)より大幅な落ち込みだ。

「加えて、賃金上昇の恩恵が広く行き渡る前に増税したことで、消費の落ち込みが激しくなりました」と片岡さん。今年春の労使交渉で賃上げに踏み切った企業は多かったが、増税による物価上昇を考慮した「実質賃金」の伸びはマイナスで、消費を冷え込ませたというのが片岡さんの見立てだ。片岡さんは「この状況で税率を10%に引き上げれば、経済成長の大幅な下振れにつながる可能性があります」と分析する。

10月2日、決算発表の記者会見に臨んだセブン&アイ・ホールディングス社長の村田紀敏さん(70)も慎重な見方だった。「来年10月に消費税率を引き上げれば、年末商戦にぶつかり大きな影響が出ます。少し先に延ばした方がよいのでは」と提案している。

「経済学者の意見も聞いてみよう」。章司は慶応義塾大学教授の土居丈朗さん(44)を訪ねた。土居さんは「消費増税はデフレ脱却の動きに水を差すという懸念は確かにあります。しかし、予定通り増税しなかった場合のリスクも非常に大きいのです」と解説を始めた。

すでに国債発行によって莫大な借金を抱えている日本が増税を先送りすれば、海外を含む金融市場で日本の国債の信用力が低下し、金利が上昇する。もし金利が急騰すれば、企業への融資や住宅ローンの金利も連動して急騰し、資金繰りに窮する企業や家計の破産も続出しかねない。

国債の金利急騰を防ぐため日銀が国債を買い支えれば、世の中に出回るお金が大量に増えて突如として高率のインフレが生じる恐れがある。「増税先送りでたとえデフレから脱却できても、高率の物価上昇や金利上昇にさいなまれることになりかねません」と土居さん。

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