フレンチの長い料理名 もうひるまない

フランス料理店といえば気軽に入りにくいイメージがあり、片仮名が並んだメニューに少々ひるむこともあるかもしれない。だがメニューは、その店の料理の魅力を伝える情報の宝庫。ある程度、読み方がわかれば、食事の楽しさは一段と深まってくる。

■主な食材名は冒頭表記

メニューの説明をするラ・ベル・エポックの山本克哉シェフ(ホテルオークラ東京)=写真 遠藤 宏

伝統的なフランス料理店での食事は、食前酒を注文するところから始まる。グラスを傾けながら、メニューを読み解いていこう。メニューは店によっては2種類ある。1つは女性客や接待先の相手に渡されるもので価格がない。男性客やホストは価格入りを見る。

料理はコース数種類とアラカルト(単品)に分かれる。このうちアラカルトについて、ホテルオークラ東京(東京都港区)の老舗レストラン、ラ・ベル・エポックで、実際のメニューを見せてもらった。

「アラカルトは、好きなものを自由に選んでもらえればいい」。シェフの山本克哉さんは言う。前菜には例えばこんな1品がある。

「フランス産フォアグラのテリーヌ トリュフとブッフサレ リ・ド・ヴォとレンズ豆のガトー仕立て」

料理名の冒頭には、その料理に使っている主な材料や調理法などが書かれることが多い。次には、付け合わせやソースなどの情報が続く。この前菜で言えば「トリュフ(きのこの一種)とブッフサレ(ここでは牛もも肉を低温調理したもの) リ・ド・ヴォ(子牛の胸腺肉)とレンズ豆」までがフォワグラに組み合わせられた食材だ。

分からなくても無理ないので気軽にサービス係に尋ねてみたい。異国の食材をめぐる会話は食事の時間を豊かにしてくれそうだ。

次に、主菜の2品。まずは魚料理の「オマールブルーのソテー 野菜添え クリーミーなソースアメリケーヌ」だ。これも主な材料が冒頭で分かる。オマールブルーは最上級のオマール海老。末尾の「ソースアメリケーヌ」もポイントだ。オマール海老の汁を利用したソースで、「米国人がオマール海老を好んだのでこう名付けたとの説がある」と山本さん。ソースは多彩で名前に個性があるので、この点も係に尋ねたい。

最後に肉料理から「特選和牛フィレ肉のパイ包み焼き“ウエリントン風”」。気になってくるのは「~風」という表記だ。「フランス料理では、人物や土地にまつわる料理に『~風』という表記を使うことが多い」(山本さん)。ウエリントンは、ナポレオンにワーテルローの戦い(1815年)で勝った英国の将軍。彼の好みに合わせて考案された料理にこの表記が施される。

こうした表現はフランス人でも知らないものが少なくない。店の人に尋ね、料理にまつわる歴史や逸話を理解すれば、いっそう思い出に残りそうだ。