大学病院の紹介を受け、6月に痔の手術を受けた男性(59)は「40年悩まされてきた痔から完全に解放された」と喜ぶ。手術は1日で終わり、「何度も病院に通うことを考えれば、結果として安くついたのではないか」と話す。

自由診療と保険診療を患者が選択できる医療機関もある。中目黒消化器クリニック(東京・目黒)は、自由診療でも保険診療でも治療内容は変わらない。同院の田淵正文院長によると、どんな疾患で治療を受けたかや、処方された薬の種類などが記録されるレセプト(診療報酬明細書)の発行を避けたい患者らが自由診療を選ぶ。「勤務先の健康保険組合に知られたくない」との理由があるという。

自由診療とすることで、従来の医療機関にはないサービスを導入することもできる。

寺下医学事務所(東京・千代田)が展開しているのは、月額3万円程度の相談料を払い、必要な時に専門医療機関を紹介する仕組み。保険診療では健康な人が常時利用するような相談は含まれない。このため自由診療で対応する。

現在は50人ほどが契約。医師でもある寺下謙三代表は「健康時から関係を築き、有事の際には信頼できる医師と徹底的に相談できるシステムは現在の保険制度では不可能だ」と話している。

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患者の負担額は? 初診料と検査費 6倍のケースも

自由診療と保険診療では、患者本人の負担はどの程度変わるのか。疾患や治療内容によって大きく変わるが、耳鼻科や肛門科で自由診療を受けた場合、初診料が5000円程度、検査などの内容にもよるが、1回1万円程度が目安のようだ。

保険診療の場合は初診料が2700円で、血液検査などを行うと5000円程度となる。このうち本人の負担は3割なので、1600円~1700円程度となる。

単純計算では、自由診療の患者の負担額は、保険診療の6倍程度となる計算だ。その分、十分な時間をかけて診察してもらったり、説明を受けたりすることができるほか、治療法の幅も広がる。費用対効果の面で、こうした利点に納得できるかが自由診療を選ぶポイントになる。

また、保険で認められていない治療法は効果があるかどうかなど、明確でない場合もある。費用面とあわせ、事前に十分説明を受けたり、情報を集めたりすることが必要だ。

(山崎大作、塩崎健太郎)

[日本経済新聞夕刊2014年10月30日付]