金融を制度で考えてしまうとダイナミックな変化には応えられない。当時フィンテックは影も形もありませんでしたが、決済という機能は不変です。機能からアプローチするのはダイナミックな社会を切り取るために有益な方法で、それは今も生きています。

そのころの政府の会議では、今年亡くなられた経済学者の池尾和人先生とご一緒することが多く、2人で金融のプレゼンテーションをすることもありました。先生もこの本と同じことをおっしゃっていたのを思い出します。

最近読んだ『The Business Reinvention of Japan』は、日本をよく知っている米カリフォルニア大のシェーデ教授の企業論です。彼女とは30年来の友人でもあります。よくある日本企業ダメ論ではなく、終身雇用など日本の企業文化が決してマイナス面だけでない点を指摘し、日立やAGCなどの事例も盛り込みながら、国際的な環境変化の中で日本企業が進めている改革について論じています。

寺や仏像を巡るお供に。

私はお寺や仏像を巡るのが好きで、『古寺巡礼』はそうしたときに開きます。両親の本棚に昔からこの本がありました。

日銀に入行して最初の地方勤務は京都支店でした。休みの日に奈良に出かけ、唐招提寺や薬師寺、法隆寺などを回るときに読んでいました。大正時代の紀行なのに古ぼけていない。つい最近も都内で法隆寺の展覧があったので読んでから行きました。この本を読むと京都時代が懐かしくなります。

(聞き手は編集委員 柳瀬和央)

[日本経済新聞朝刊2021年9月18日付]