2021/9/20

総務省の調査では、4分の1の自治体が「制度改正前よりも給料水準が下がった職種がある」と回答した。地方自治総合研究所(自治総研)の上林陽治研究員は「新制度導入でパートにも期末手当を支給する代わりに、時間給を引き下げるなどして効果を帳消しにしている」と分析する。

背景のひとつとして、ある総務省幹部は「各自治体の行政改革の中心が人件費削減となり、世論を気にする首長が総人件費の増加を嫌がる傾向がある」ことをあげる。総務省は「期末手当の支給を理由とした給料抑制は改正法の趣旨に沿わない」と通知している。ただ実態は自治体の裁量任せといえ、国・自治体双方が改正法の趣旨徹底を図る意識が低いことが、非正規の処遇改善と逆行する現場の動きにつながっている。

上林研究員は「公務員の非正規化は、相対的に賃金の低い女性への依存を前提に進展してきた」とも話す。家計の補助的に働く女性を雇用や人件費の調整弁とみなす姿勢はいまだ根強い。

処遇改善に取り組む自治体も

もちろん非正規の処遇改善に向け、着実に取り組む自治体もある。長野県小布施町は、全職員の7割にあたる238人が会計年度任用職員だ。新制度導入に伴い、パートタイムの非正規職員にも給料水準を維持した上で1.45カ月分のボーナスを支給。今年度はさらに上乗せし1.8カ月分とした。昨年度の人件費は全体で約7千万円増加した。

周辺自治体との合併を選択しなかった同町では、厳しい財政状況の中でも住民サービスを維持するため、正規職員を10年間で約2割削減。一方で地域住民を非正規として積極的に採用してきた。大宮透総務課長は「高い専門性を要する基幹的業務も非正規が担っているが、現状でも最低賃金に近い水準だ。財政上の制約はあるが、昇給も含め少しでも待遇改善につなげる努力を続けたい」と話す。

自治体が「財政の健全化」と「行政サービスの多様化」という二律背反する役回りを迫られる中、そのしわ寄せは新制度移行後も非正規の大半を占める女性らに向かう。はむねっとの調査では94%が「将来に不安がある」と回答した。

自治総研の上林研究員は、非正規公務員の処遇改善の選択肢として「個人の専門性を重視した『ジョブ型』雇用の導入」を提示する。「(非正規職員を)無期雇用に転換して雇用の安定性を高めつつ、職種の限定や勤務時間などの条件を明確に定め、職務に対して公平な評価をすることが求められる」と訴えている。

孤立させぬ取り組みを
 低待遇のまま孤立する非正規の女性たち。その声に労働組合は耳を傾けてきたのだろうか。連合の神津里季生会長に実情を伝えると、非正規への取り組みを「道半ばのだいぶ手前」と率直に認め「コロナ禍での気づきをどう生かすか、労組も問われる」と語った。共に働く非正規の不安を見て見ぬふりしてはいないか。「決してそんなことはない。解決は連帯からしか生まれない」とする神津氏の言葉は、コロナ後の労組の存在意義にも直結する。
(飯塚遼)

[日本経済新聞朝刊2021年9月20日付]