日経MJ

スーツと百貨店は衰退産業にあらず

17年のブランド開始当初から、逆境と向き合っていた。当時ビジネスウェアのカジュアル化でスーツ市場は縮小の一途。オーダースーツというニッチな成長分野に目を付け、「若い人がカスタマイズを楽しめるように」(久曽神氏)と始まった。現在の購入者は40代以下が6割を占め、狙いどおり若年層開拓のコンテンツにもなっている。

20年からの新型コロナで逆風は強まった。在宅勤務の定着に加え、外出する度に自宅で衣服を洗いたいというニーズが高まりスーツ離れに拍車がかかったのだ。スタイルオーダー サロンはネットに入れて洗濯機で洗える商品の開発に着手した。

ここでも重視したのはスーツの基本は変えないこと。単なるウオッシャブルなら裏地や肩パッドなどを省きポリエステル製にすればいい。実際、多くの競合がそうした低価格スーツを相次ぎ発売している。

一方で高島屋には百貨店のプライドがある。着た際の立体感を残すため裏地や芯地はあえて取らず、上質感を出すため生地はポリエステとウールの混合素材を中心にした。ハードルは高くなったが難路を選び、何度も試験を重ねて21年3月に発売した。「オーダースーツでウオッシャブル対応は他にはないだろう」(久曽神氏)と胸を張る。

スーツと百貨店。市場規模だけみれば共に衰退産業とされるが一流の商品を求める顧客がいるのもまた両者だ。逆境に負けない意地とプライドが次なる進化へとつながっていく。

(古川慶一)

2017年秋に発売。感度の高いビジネスマンの希望をかなえる新しいコンセプトのオーダースーツとして誕生した。小物類を含めて様々なコーディネートができる楽しさを提供する。

[日経MJ 2021年9月3日付]


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