非管理職の技術者も昇進

――リーダーの育成にどう取り組んでいますか。

「IIJは私が社長になる前、どちらかというと年功序列型の給与体系でした。それを変え、多くの若い人を課長以上で抜てきするようにしました。若い人に良い仕事をさせるのが教育としても重要です。ポストに適任か各部に推薦してもらい、働きぶりを知っている人の意見を聞きながら評価します」

官僚から転じて2013年にIIJ社長に就いた勝さんは創業者の鈴木会長(右)の存在が大きかったと話す

「社員の7割が技術系です。管理職をやらずにスペシャリストになりたい社員もたくさんおり、ちゃんと昇進できる仕組みを整えました。技術革新を目指すチャレンジ精神が極めて大事です。創業者の鈴木さんが今も社員と接していることで、社風の浸透につながっています」

――新型コロナの感染拡大は社会に大きな変化をもたらしています。

「リーダーには時代を読む力が求められます。コロナ禍は変化をものすごく加速させます。一気に2030年に飛んだようなものです。世界を見ると米中関係や格差、環境などの問題が先鋭化しています。コロナ禍が落ち着いても以前に戻ることはないでしょう。変化が加速する中でどう対処するかが今のリーダーの大きな仕事です」

「IIJでは毎週、幹部が集まり、これからやりたいことや問題などを情報共有します。リーダーには良い情報だけでなく、悪い情報も上がるようにしないといけません。定期的な話し合いの場は重要です」

――コロナ下で企業淘汰が進む可能性もあります。

「社会に大きな影響を及ぼす危機が起きると価値観がガラッと変わります。日本は1997~98年に立て続けに4回もリーマン・ショック級の経験をしています。当時、山一証券などが相次いで破綻し、護送船団方式が崩壊しました。その後、企業はコストカットに走りました」

危機対応に多様な人材

――企業はどうしていくべきでしょうか。

「危機を経験して消費者物価指数(CPI)は7年連続でマイナスとなり、非正規社員の割合は20%から40%弱になりました。社会現象として自殺者が2万人台から一時は3万人台に増え、冠婚葬祭の様式も変わりました。当時と同様、コロナ禍でも価値観が大きく変わりつつあります」

「日本の市場はそれなりに大きいですがパイは小さくなっています。企業はやはり海外に出ていくべきだと考えています。幹になる事業をどうやって発展させ、変えていくかを考えなければなりません。白紙から始められるスタートアップは別ですが、既存の企業が変わるのは難しいです。そこがリーダーが必要な所以(ゆえん)だと思います」

――どういう組織が理想でしょうか。

「多様な人材がいた方が発展すると思います。危機の際に企業はいろんな事業のポートフォリオの方が対応でき、生き残る可能性があります。人材も同じで、多様なら危機に対応しやすいのではないでしょうか」

次のページ
対談でも独自視点