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グーグルの研究で注目を集める心理的安全性。リモートワーク普及を背景に関連本が人気だ

グーグルの研究で注目を集める心理的安全性。リモートワーク普及を背景に関連本が人気だ

「こんなことを言うと面倒なヤツだと思われないだろうか」と口をつぐむ。誰しも一度は職場でこんな経験がないだろうか。みなが気兼ねなく意見を言えて自分らしくいられる「心理的安全性」がないからかもしれない。

グーグルの研究で注目を集めた心理的安全性。このところ関連の書籍が次々と出版されている。中でも注目は『恐れのない組織』(2021年2月、英治出版)だ。このコンセプトの提唱者であるハーバード大教授のエイミー・C・エドモンドソン氏の最新刊だ。ピクサーやフォルクスワーゲンなどの事例をもとに、対人関係の不安を乗り越えた組織のあり方を描いている。心理的安全性について包括的に理解できる一冊だ。

ではどのように日本のビジネスの現場で心理的安全性をつくれるのだろうか。その体系を提示したのが『心理的安全性のつくりかた』(20年9月、日本能率協会マネジメントセンター)だ。著者の石井遼介氏は組織やチーム、個人のパフォーマンスを研究し、アカデミアの知見とビジネス現場の橋渡し役を担っている。現在15刷、7万5000部。「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」でマネジメント部門賞を受賞した。

これほどの反響を呼んだ理由の一つにコロナ禍におけるテレワークの普及がある。テレワークはチームの希薄な関係性をあぶり出した。「生産性が向上しない」と思い悩む企業の管理職たちが、現状を打破する手掛かりを求めたのではないか。

石井氏によると、日本の組織では、話しやすさや助け合い、挑戦、新奇歓迎の4つの因子があるとき、心理的安全性が感じられるという。そしてこの新奇歓迎は、多様性と包摂(ダイバーシティ&インクルージョン)、所属意識とも深い関わりがあるという。

興味深いことに、心理的安全性という言葉をモノやサービスの取材でも耳にするようになった。ライブ配信会社SHOWROOMの前田裕二社長は日経電子版の1月の記事中、新アプリ立ち上げで「ネットでもリアルでも誹謗(ひぼう)中傷が目立つ中、心理的安全性が担保された仲間と集まれる場所をつくりたい」と話している。消費においてコミュニティーの存在が大きくなってきているからだろう。

趣味嗜好や価値観が同じ人々が集い、モノやサービスを通じて他者とつながる喜びやコミュニティーの一員であるという安心感に、より価値を感じるようになってきた。心理的安全性は消費社会を考える上でも大切なテーマとなりそうだ。

(編集委員 大岩佐和子)

[日本経済新聞2021年8月28日付]

恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす

著者 : エイミー・C・エドモンドソン
出版 : 英治出版
価格 : 2,420 円(税込み)

心理的安全性のつくりかた

著者 : 石井 遼介
出版 : 日本能率協会マネジメントセンター
価格 : 1,980 円(税込み)

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