日経MJ

品質に納得する顧客基盤を築くことが当面のチャレンジ

斎藤社長は「リーマン・ショックを機に、化粧品は高級品とプチプラの二極化傾向がはっきり表れるようになった。3000円前後などの中価格帯の市場がなくなった」と振り返る。売り上げは14年に80億円ほどと、バブル崩壊以来の水準まで落ち込んだ。

15年に揺らいでいたブランドの根本を立て直そうと原点回帰を図る。30~40代女性の現代の生活を観察し、インサイトを探り直した。高品質低価格をさらに突き詰め「一流ブランドの品質を3分の1の価格で」と具体的に表現。ロゴの刷新や実店舗の増加を経て、19年には売上高、顧客数ともに過去最高を更新した。

その挑戦は化粧品にとどまらない。イタリア製レザーの財布は予約期間を区切った受注生産体制にすることで、著名ブランドと同じ仕入れ先の革素材の品が1万円台で注文できる。到着まで3カ月かかるが、累計で5万個を売り上げる人気商品だ。

15年からの回復期には、訪日旅行者を介してアジアでもブランドの知名度が高まっていった。18年からは中国向けの越境電子商取引(EC)も始めた。人気商品のメーク落としは今年、オイルタイプに加えて中国で人気の高いウオータータイプを新発売。メーク落としの売り上げは21年4~6月に前年同期に比べて3倍になり、アテニアの売上高も18%増と好調が際立った。

中国への本格進出は緒についたところだ。「中国では流行の移り変わりが激しく、機を逃すとブランドごと忘れられてしまう」(斎藤社長)といい、品質に納得してくれる顧客基盤を築くことが当面のチャレンジだ。

(増田由貴)

ブランドの起点は意外にも、かつて横浜で盛んに取引された絹のスカーフ。品質でなくブランド名で値段が変わる世界からの着想で、アテニアが生まれた。現在も財布や靴、衣料品のラインアップに抜かりはない。将来的にはファッション分野でブランドを独立させられるまでに育てたい考えだ。

[日経MJ 2021年8月27日付]


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