人事に風通しの良さを

――人事はどう決めるのでしょうか。

「年1回の人事異動で各部局が誰それがほしいと要望します。Aという人は毎年各部局から引き合いがあり、Bという人はそうでもない状況が続けば、評価はおのずと決まってきます。この仕組みのいいところは派閥ができにくいのです。非常に風通しの良い仕組みだと思います」

――次官の時に消費増税を柱にした税と社会保障の一体改革に携わりました。

「たどり着くまで10年以上かかりました。最初は2002年の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)です。小泉純一郎政権で国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を10年で黒字にする目標を立てました」

「最初の5年間は恒久的減税を戻し、国と地方の三位一体改革を進めました。06年から歳出カットを徹底することになり、分野別に5年間の計画を作りました。どうしても埋まらないものは増税で対応する計画でした。私は幸いなことに最初から色々なポストで関わりましたが、組織としても使命感がありました」

――当時、官房長だった香川俊介さんはその後、次官を務められましたが、退官直後に病に倒れました。

「香川こそ最後、使命感で生きていました。社会保障と税の一体改革にも官房長として奔走してくれました。あのときは各局長と毎日、作戦会議をしていました。香川は口が悪くて『勝さんは何を言っているか分からないから、終わったらまた会議する』なんて言っていたのを思い出します」

「香川が食道がんと分かったのは私が次官を辞める2日前でした。自分のところにやってきて『健康診断に引っかかった』というのです。珍しく動揺していました。それでも仕事を続けました。いろんな人と深くつきあい、人に共感する力がものすごいリーダーでした」

(奥田宏二)

■ドイツ育ちの乱読家
かつ・えいじろう 1950年生まれ。埼玉県出身。75年東大法卒、大蔵省(現・財務省)入省。理財局長や主計局長などを経て、2010年に財務次官。12年にIIJ特別顧問に就き、13年から現職。
 学びを求める姿勢は年を重ねても変わらない。趣味は読書で、自らを「乱読家」と評する。最近読んだ本のなかで面白かったのは、英国の植民地支配など、世界の歴史を港湾から読み解いた本だ。少年時代をドイツで過ごし、海外の書籍は大半を原書で読む。

[日本経済新聞夕刊 2021年8月26日付]

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