受検者にはテストの開始前に監視することを説明している。発売後、「能力検査を重視する多くの企業から問い合わせが来た」(園田氏)。

SPIの源流は1963年にリクルートが始めた適性検査事業まで遡る。学歴や縁故による選抜が広く実施されていた当時、人物本位の採用を実現するべく開発された。今の就活生が主張する「人脈が評価されるから友人を頼ってよい」との理屈は通らない。そもそも問題を流出させたり本人以外が受検したりすることは明確に禁止されている。

人材コンサルティングのヒューマネージ(東京・千代田)は、学生の不審な行動を人工知能(AI)が検知するウェブテスト「TG―WEB eye」を開発した。

AIがテストの様子を常にチェックする。不正が疑われる行為をAIが検知すると企業に報告する。テスト前には「不自然な動きをすればAIが不正を疑う可能性がある」との注意事項を案内し、不正行為そのものを抑止する。

6月のサービス開始以降、大手メーカーやコンサルティング会社などから問い合わせが相次いだ。導入企業からは「学生が不正していないことをある程度確認できる。テスト中の態度を把握できるので有益な情報になっている」との評価が寄せられている。

「真面目」損させない

ヒューマネージで適性検査事業を担当する戸倉大輔取締役本部長は「数年後には不正監視は当たり前のシステムになる」と語る。監視システムは不正を暴くためではなく、真面目にテストを受ける学生が損をしないようにするのが目的だと説明する。

不正な手段に頼らず、効率的に能力テストの結果を向上させるにはどうすればいいのか。専修大学のキャリア形成支援課の渡辺正志課長はSPIについて「問題は小学校4年から中学校2年で学習するレベル。忘れている知識を思い出せば大学生なら解ける」と語る。

専修大学は例年外部の講師によるSPI対策講座や模擬テストなどを実施し、対策講座は約300人が受講する。2021年は6月から1回約90分の講座を15回オンデマンド配信し、非言語分野(数的処理など)で素早く計算する解法などを解説する。講座を受けたことで、ほとんどの学生の模擬テストの結果が良くなった。

渡辺氏は不正が行われている状況について「公平性や適切さに欠け、テストの趣旨に反する。替え玉受検が成功して入社しても、能力を正確に測れていないので会社とのミスマッチになりかねない」と警鐘を鳴らす。

リクルートの就職みらい研究所の増本全所長は、企業と就活生の良いマッチングのためには「ありのままの自分の姿を伝える必要がある」と指摘した。不正に手を染めることで「当たり前のようにルールを破ってしまう、悪い癖が身に付いてしまうのではないか」と懸念する。

不正に頼る就活生に問われているのは人脈ではなく、個人の倫理観だ。企業側も不正を放置していては能力のある学生の取りこぼしや、採用後のミスマッチを起こしかねない。対策は容易ではないものの見過ごせない問題だ。

(赤堀弘樹、石崎開、湯沢周平)

[日経産業新聞 2021年8月25日付]

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