自宅のパソコンで就活生の能力を測定する「ウェブテスト」で、替え玉受検などの不正が行われていることが探偵団の調査でわかった。新型コロナウイルス流行の影響で会場に集まるのが難しくなり、自宅受検を認める企業が増えたことでルール違反を犯す学生が増えたとみられる。学生の言い分に対して、人事やテストの開発元は困惑の表情を浮かべる。
東京都内で活動する球技系サークルでは、テストが得意な部員による替え玉受検が行われている。早稲田大学4年の男子学生は「2回ほど友人のテストを代わりに受けた」と明かした。
この学生は代行受検は良くないことだと理解しているというが「企業側は不正を黙認している」と主張する。「人事が厳しく取り締まらないのは、協力してくれる友人を持っているか人脈を試しているからだ」とも話す。
複数の学生に話を聞いたところ、企業が人脈を評価するために不正を野放しにしているという言い訳をする学生は少なくなかった。銀行から内定を獲得した男子学生は「一人で解いている人は他人を頼る努力をしていないのでは」と話し、「協力プレー」が当然だとする風潮もあることがうかがえた。
「ネット上で出品している『解答集』を1000円で購入した」(金融機関内定の女子学生)、「友人とパソコンの画面を共有して一緒に受検した」(家電メーカー内定の男子学生)など、様々な学生が実態を告白した。取材では不正が企業に見破られたという学生は一人もいなかった。
人事はなぜ摘発に乗り出さないのか。あるテストを利用しているシステム開発の企業では、新型コロナの影響を受けて2022年卒採用から自宅受検に限定した。すると会場での受検も認めていた21年卒と比較して「高得点者が異常に多い」結果となった。
人事担当者は「不正があったと考えざるをえない」と語る。それでも証拠がないことから摘発は困難な状況だ。新型コロナが収束すれば、会場を利用したテスト形式に戻す予定だ。
「企業は人脈を確かめている」と考える学生がいることを伝えると「そんな言い訳があるのか」と驚いた様子だった。能力を偽って内定を獲得しても「入社して困るのは自分自身だから真面目に受けてほしい」と訴える。
開発元は対策に注力
リクルートマネジメントソリューションズ(東京・品川)が開発した適性検査「SPI3」では、会場で受検する「テストセンター」や、自宅などでパソコンを利用する「WEBテスティング」などの形式を用意している。
園田友樹HRアセスメントソリューション統括部長はWEBテスティングについて「替え玉や解答集を使った不正の検知は難しい」と語る。導入企業には不正のリスクがあると説明し、テストセンターの利用を推奨している。
もちろん不正を傍観しているのではない。ネット上に出品されている解答集を確認し、定期的に問題を入れ替えている。7月にはウェブカメラを使って受検の様子を監督するオプションを発売した。受検者のPCにウェブカメラが付いているか、受検者が外付けのカメラを持っていることが前提になる。