料理に使うのは霞ケ浦で養殖する「アメリカナマズ」。井戸水が流れる店内のいけすで数日間泥を吐かせ、三枚に下ろす。「手早く皮を引き、水にさらす」と板前の柴田章成さん。「皮下脂肪に臭みの成分があり、処理を怠ると料理が台無しになる」からだ。

加熱する際にも気を配る。油で揚げると内部の水分が蒸発。臭みの成分が凝縮され、えぐみが増す。「薄く切り、素早く揚げる」ことで淡泊な味わいが楽しめる。

鈴章は1897年(明治30年)創業。約20年前に新メニューを検討し、地震を起こすナマズの神話で有名な鹿島神宮にちなみ、ナマズ料理を始めた。「健康志向の女性にも人気」と若女将の柴田淑恵さんは笑顔を見せる。

丼ものにもナマズが活躍する。霞ケ浦を望む美浦村。あたりや食堂の人気メニューは、ナマズと地元産野菜を使った「かすみ天丼」だ。

主役のナマズの脇を固めるのは、稲敷市産のレンコン、高級野菜の「江戸崎かぼちゃ」、生産量日本一の神栖市産のピーマン。県内の名産品が「一丼」に会する。

野菜もたっぷりなナマズバーガー「なめパックン」(行方市の道の駅たまつくり)

つみれ汁にもナマズが入る。店主の高橋勝男さんは「ミキサーは使わず、包丁で丁寧にたたいて作る」と話す。細やかなこだわりが、あっさりしたなかにもコクのある味わいを引き出してくれる。

ナマズをバーガーにしたのは「道の駅たまつくり」(行方市)だ。希少部位の胸びれ付近の「カマ肉」にレンコンを混ぜたパティを軽く揚げる。ピザソースを絡め、千切りキャベツ、レタス、キュウリ、水菜、水煮のトマトなど地元野菜もたっぷり挟む。淡泊な味わいにソースの適度な辛さ、新鮮野菜のシャキシャキ感が加わり飽きさせない。

<マメ知識>在来種は60年代に激減
 食用ナマズの多くは養殖で育てた外来種の「アメリカナマズ(チャネルキャットフィッシュ)」だ。1970年代に食用目的で輸入され、体長が80センチメートル程度に達するものも。
 一方、水路や水田でふつうに泳ぐ姿が見られた国内固有の在来種「ニホンナマズ(マナマズ)」。堤防や水門の整備が進み「川と水田の結びつきが弱まったことで産卵環境が変化、60年代後半から激減した」(茨城県水産試験場内水面支場)という。
 ナマズ料理をいただきながら、自然との共生や環境配慮にも思いをはせた。

(つくば支局長 伏井正樹)

[日本経済新聞夕刊2021年8月5日付]