厳しいときこそ、もっと大きな絵を描こう三井不動産 菰田正信社長(上)

三井不動産社長 菰田正信氏
三井不動産社長 菰田正信氏

国内不動産大手が新時代の街づくりを進めている。従来は好立地にオフィスビルなどを建てれば良かったが、新型コロナウイルスの影響で感染症対策などソフト面も欠かせない。社長就任から10年を迎えた最大手、三井不動産の菰田正信社長は「常にビジョンを語ることが大切だ」と説く。理想の暮らしをどう実現するか、将来像を示すことが変化の時代におけるリーダーの役割と考えている。

(下)机上ではなく、背中で教える 基盤は人と人のつながり

――コロナ下でかじ取りをするリーダーとして、何が必要だと思いますか。

「組織が進むべき方向性を示し、ぶれることなく実行することです。会社が厳しい時こそ、夢のある大きなビジョンを描くのです。不安な従業員らに対し、自分たちが何をやるべきなのかを伝えつつ、苦しい局面を乗り越えれば輝かしい未来が待っていることを語ることが大切です」

「打ち出した方向性に共感してもらえれば、社内で貢献していこうという機運が自然と高まっていくと思います。業務企画室長だった1990年代後半、岩沙弘道社長(現・会長)のもと、新たなビジョンを作りました。当時はバブル崩壊の後遺症が残り、当社は1兆円を超える含み損を抱えていました」

「もう少し待てば不動産価格が回復するかもしれないという淡い期待もありましたが、問題を先送りせず単年度ごとの利益が傷んでも早期に処理することにしました。ただ、財務体質の改善に向けたリストラ策だけでは社員にとって夢がありません。次の成長につながるビジョンもセットで打ち出しました」

岩沙会長(右)には部下として長く仕え、大きな絵を描く大切さを学んだ(2000年前後)

――どのような夢を描くかは難しい課題です。

「会社や社員にとって一番分かりやすいテーマが良いと思います。当社では街づくりです。多くの人が様々な形で空間を共有し、新たなつながりやにぎわいを生む街づくりが我々の本業です。社員もやりがいを感じることができます」

「六本木の東京ミッドタウンが代表例です。最近では2021年1月に約1200億円を投じて買収した東京ドームが挙げられます。後楽園という一つの街で働く人もいれば、住む人もいます。買い物や野球観戦のために訪れる人もいます。そうした新しい街を創造し、イノベーション(技術革新)を生み出すプロジェクトに対しては、自然と夢を感じるものです」

――コロナ下で見えてきた課題もあります。

「この先も変わらないと思うことには信念を貫きたいです。『人々の暮らしを豊かにすること』です。新型コロナで改めて大事な点だとわかりました」

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