頭頸部がん患者がネットを通じて情報を得られる場も出てきた。様々な種類のがんの患者の社会復帰を支援するNPO法人5years(ファイブイヤーズ、東京・港)のサイトだ。42歳で発症したがんを克服し、サロマ湖100キロウルトラマラソンを何回も完走した大久保淳一さんが15年にサイトをつくった。

登録者は1万5000人を超す。大久保さんは「闘病中の人は希望や仲間を求めるが、ネットには悲観的な情報ばかりが目立っていた。治癒の目安とされている5年間を生き抜き、社会復帰するために、必要な情報を得られるサイトをつくろうと考えた」と話す。

全国に活動を広げていることもあり、舌がんの会員は約260人、口腔(こうくう)がん患者も約60人が登録。それぞれが病歴や治療歴を公開している。そのひとり、北海道のジャイアンさんは「19年8月手術舌がんステージ2」「会話の口調は、かなり良くなった。うれしい」「再発が気になり落ち着かない」「毎日、生きてる事に感謝」などと書き込んでいた。

登録者は自分の病状や回復状況と似た人を探し、情報交換の場として機能する「みんなの広場」で連絡を取り合える。「互いが同志であり、ロールモデルになる」と大久保さんは話す。

頭頸部がんは患者や経験者が少ないだけに、情報交換の場は貴重だ。ネット経由であれば、参加のハードルもより低くなり、住む場所を問わず利用できる。患者本人にとっても家族にも、孤立を避けるための有効な手法になると期待が集まる。

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写真が笑顔取り戻す機会に

2017年から「ラベンダーリング」という写真撮影会が開かれている。電通や資生堂の有志ががん患者をメーキャップし、その笑顔を撮る。NPO法人キャンサーネットジャパン(東京・文京)のイベントなどこれまで8回。2月に写真集も出した=写真。

中心となっているのが電通プロデューサーの月村寛之さん。がんを発症した部下の御園生泰明さんと語り合うなかで「がんは患者の30%が仕事を辞める大変な病気というイメージを変えよう」と企画に動いた。

関係者が最も印象的だったと語るのが頭頸部がん経験者の心情の変化だ。写真を避けてきた女性は「自然な笑顔は出ないと思っていたが、思い切って撮影に飛び込んだら気持ちが上がった」と明かしたという。内にこもりがちな頭頸部がん経験者の思いを解き放つ機会になっているようだ。

(礒哲司)

[日本経済新聞夕刊2021年7月28日付]

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