選考方法はどうか。新卒一括採用と通年採用を併用している企業は秋や夏まで募集期限を延長する会社が多い。なかには決められた選考フローがなく、内定承諾まで個別にメンターを付けて意思疎通を強化する企業もある。「いきなり面接を実施する会社もあるため、応募後のプロセスはホームページで細かく確認した方がいい」(小出氏)。

IT(情報技術)業界では大手企業でも通年採用の導入が進み始めている。富士通は19年度から通年採用を始めた。大学と大学院の最終学年の学生を対象に、卒業間近の2月まで毎月エントリーを受け付けている。選考の流れは一括採用とほとんど変わらない。

富士通の新卒採用チームの渡辺賢シニアマネジャーは「就活市場が変化するなかで多様な価値観を持った人材を採用したかった」と話す。毎年700人以上を採用しているが、21年卒では約40人の学生が通年選考で内定を得た。

留学経験者や公務員試験を受けていた人など、応募する学生のバックグラウンドも様々だ。20年12月に留学を終えて帰国し、就活浪人して22年度の就活を始めようと考えていた時に同社の採用ページを見つけた人もいる。渡辺氏は「新卒ほど色々な企業のことを知れる機会はない。学生には後悔をしない就活をしてほしい」と通年採用の広がりに期待する。

採用担当者には負担増

一方で通年採用は新卒一括採用より採用時期が長くなるため、採用担当者の負担は大きい。通年採用を実施するサイボウズは入社時期を4月か10月かで選択でき、毎年30~40人ほどを採用している。

同社の採用チームはキャリア採用とあわせて15人弱だが、それでも負担は大きいと語る。2次選考までは現場で働く約100人の社員が面接を担当する。選考の日程調整をする専門のオペレーションチームも設けるなど、役割を決めて負担を分散している。

サイボウズで新卒採用を担当する平賀実莉氏は「2つの年度の採用を同時並行で進めていくので運営は決して簡単ではない」と話す。企業は通年採用を始める前に導入する目的とコストの比較を明確にする必要がありそうだ。

学生にとっては自分で選考を受ける時期を選びやすい通年採用だが、ビズリーチの小出氏は「いつでも受けられるからといって、後回しにすることはおすすめしない」と語る。企業によっては募集人数に限りがある職種もある。

他の企業の内定を持っていることが必ずしも有利になるわけではないとも説明する。「ライバル会社の内定を持っていたら、なぜこの会社に入りたいのかをより深掘りされることもある」(小出氏)。もし自分にとって志望度の高い企業が通年採用をやっていたとしても、早めの準備をしておいた方がいい。

大学4年生のなかには内定をもらっていても、納得して就活を終えられない人がいるかもしれない。通年採用が広がれば「次の進路を納得して決める」という意味でも、学生にとって有力な選択肢になりうる。

(山口和輝)

[日経産業新聞 2021年7月28日付]

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