日本の通年採用の実態は 留学経験者などの受け皿に

イラスト=太田美菜子
イラスト=太田美菜子

日本企業では特定の時期に卒業予定の学生を集中して選考する、新卒一括採用が一般的だ。学生は就活の時期の目安があり、複数の企業を受けられる利点があるが、留学や学業の都合で特定の時期に就活の時間を割けない学生もいる。多様な働き方に関する議論が進む流れを受けて、就活の時期に縛られない通年採用を導入する企業も増えてきた。日本企業の通年採用の実態について探ってみた。

「何度も面接するうちにここで働きたいと思うようになった」。オーストラリアの大学に在籍していた斉藤優香さん(仮名)は2021年5月、通年採用をしていた教育系のスタートアップから内定を得た。就活SNS(交流サイト)を通じて企業からスカウトされたのがきっかけで、大学を6月に卒業し、8月から正社員として働く予定だ。

新型コロナウイルス禍で斉藤さんは20年に日本に一時帰国していたが、学業が忙しく本格的に就活を始めたのは21年4月だった。周囲の学生と同じく新卒一括採用の枠で選考を受けたが準備の遅れで思うような結果は出なかった。

就活のスタートに出遅れたが、スカウトのあった企業は通年入社を導入していたため厳格な選考期限がなかった。採用担当者とは学生時代の経験や今後のキャリアについて1カ月かけてじっくりと話し合うことができた。

斉藤さんはもともと大学を卒業してからも就活を続けるつもりだったと話す。「海外では大学を卒業してから企業を探し始める学生の方が多い。学生生活でしかできないことをやり切ってからでも選考が受けられるのは通年採用のメリットだ」と振り返る。

そもそも新卒一括採用は日本独特の採用システムといわれており、欧米では通年採用が一般的だ。政府主導の就活ルールでは、2022年卒の採用は21年3月に説明会の解禁、6月に選考解禁としている。特に留学中の学生は就活のために帰国するのも難しく、特定の時期に選考が集中するのは不利になるという声がこれまでも上がってきた。

導入企業は3割弱

人材サービスのビズリーチが20年9月に実施した調査では「通年採用を導入している」と回答した企業は全体の28%だった。「今後の導入を検討している」と回答した企業をあわせると約65%だ。多様化する学生の需要に柔軟に対応しようと企業も変化を模索している。

ただ、通年採用の定義や解釈は企業によって違うようだ。ビズリーチ新卒事業部の小出毅部長は「市場全体の共通概念はまだできていないのが現状」と分析する。なかには採用目標が達成できず、結果的に通年で募集をしている企業もいると説明する。

小出氏によると通年採用は大きく「選考対象」と「選考方法」の2つに要素を分けられる。選考対象は21年度に卒業予定の学生(最終学年)に絞っている企業が多い。就業経験がある30歳以下のポテンシャル人材を募集の対象に含むこともあるが、職務内容を定めて成果で評価するため高い専門性が求められるジョブ型の中途採用とは枠を区別する場合がほとんどだ。

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採用担当者には負担増
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