今も行動量は落とさない。2000人の顧客を抱える河田氏は、なじみ客との関係維持や新規開拓で毎日30人に会うと自らに課している。コロナ禍では対面できず、資料や名刺のポスティングをする日もある。名刺がすぐなくなるため、1度に2000枚を作るようにしている。
休日も仕事につながる過ごし方を心掛けている。BMWファンには富裕層も多い。河田氏は自腹で高級レストランやホテルを体験し、顧客から「どこかいいお店知らない?」と聞かれれば、すぐ答えられるようにしている。同じ感性を磨き、会話の引き出しを作ることで、顧客の信頼にもつながると考えている。
努力を絶やさないのは、ある顧客の叱責を教訓としているからだ。「このままだと営業マンとして先がないぞ」。07年末、親しい顧客から呼び出された。全国トップとなることがほぼ確実視されており、「調子に乗っていた」(河田氏)と振り返る。
他部署のスタッフにどこか横柄な態度をとるなど謙虚さに欠けていた。顧客はそうした様子をみていて、あえてきつく叱ったのだ。河田氏は行動を改め、09年に再び日本一に返り咲いた。
BMWのような高級車を地方で多く売るのは一見難しそうだ。ただ、河田氏は「まだ開拓できていない顧客がたくさんいる市場でもある」と話す。数千万円する超高級車と違い、BMWの車種には富裕層でなくても「手を伸ばせば買える価格帯」(河田氏)もある。
オートロックマンションやオフィスビルの多い都市部より地方の方が飛び込み営業しやすく、顧客から知人を紹介してもらいやすい面もある。持ち前の行動力でどんな客も取りこぼさない。情熱の車輪は今日も回っている。
(白井咲貴)
かわだ・てつや
03年大学卒業後、名鉄AUTO(名古屋市)に入社。岐阜市内の店舗を経て04年に多治見支店に異動。現在は同店のセールスマネージャー。全国トップの販売実績を度々獲得している。
03年大学卒業後、名鉄AUTO(名古屋市)に入社。岐阜市内の店舗を経て04年に多治見支店に異動。現在は同店のセールスマネージャー。全国トップの販売実績を度々獲得している。
[日経産業新聞 2021年7月27日付]